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米テラパワー 「Natrium」起工式を挙行

13 Jun 2024

桜井久子

起工式に参加する、ゴードン州知事(左から3人目)、ゲイツ会長(左から4人目)、レベスクCEO(左から5人目)  ©TerraPower

米国の原子力開発ベンチャー企業であるテラパワー社は610日、自社が開発する第4世代のナトリウム冷却小型高速炉「Natrium」実証プロジェクトの起工式を開催した

開発設計から建設に移行した米国初の先進炉プロジェクトとなる。起工式には、テラパワー社を2008年に設立した、ビル・ゲイツ会長(米マイクロソフト社創業者)らが参加した。

ゲイツ会長は、「テラパワーの次世代原子力エネルギーが、私たちの国、そして世界の未来に力を与えると信じている」と挨拶。C.レベスク社長兼CEOは、「『Natrium』は無炭素エネルギー、エネルギー貯蔵、コミュニティに長期的な雇用を提供する」と強調した。

ワイオミング州のM.ゴードン知事は、「『Natrium』は国内エネルギー源の確立とともに、何百もの雇用、キャリアの向上、新たな活力を約束する、官民協力のすばらしさを実証するもの。ワイオミング州は国の競争力と安全確保に貢献する」とプロジェクトの意義を語った。

Natrium」炉は、テラパワー社がGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社と開発する先進炉。HALEU燃料を使用する電気出力34.5kWのナトリウム冷却高速炉(SFR)で、熔融塩を使ったエネルギー貯蔵システムを併設し、電力負荷の変化に追従する柔軟な運転が可能。ピーク時には電気出力を50kWまで増強して5.5時間以上稼働する。ワイオミング州南西部のケンメラーで閉鎖予定の石炭火力発電所の近くに建設し、建設時には最大約1,600人の労働者が必要となる。建設期間は5年間。運転開始後はプラントの警備を含め、250人が日々の活動をサポートすると同社は見積もる。今年3月末に米原子力規制委員会(NRC)に建設許可を申請した。官民パートナーシップである米エネルギー省(DOE)の先進的原子炉実証プログラム(ARDP)を通じて、「Natrium」の設計、建設、運転特性を検証する。原子力部分の着工は早くて2026年、運転開始は2030年を予定している。

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