原子力産業新聞

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マイクロ炉のNATO施設への配備を検討

13 Jun 2024

桜井久子

PWR-20 実証モジュールを工場で製造
(於ポーランド、2023年) ©Last Energy

米国のマイクロ炉開発企業のラスト・エナジー社は63日、北大西洋条約機構(NATO)のエネルギーセキュリティ センターオブエクセレンス(ENSEC COE)とのパートナーシップを発表。共同でマイクロ炉の軍事利用に関する研究を行い、将来的にNATO軍事施設への配備の可能性を探る。

本パートナーシップは、ラスト・エナジー社のB.クゲルマスCEONATOENSEC COE所長であるD.ウズクライティス大佐が署名。ENSEC COEと原子力企業との間で締結された初の合意文書である。

クゲルマスCEOは、「軍事基地において、原子力以外に常時の電力供給が可能なエネルギー源はなく、発電プラントの小型化、モジュール化が可能」との認識を示した。

ENSEC COEは、特定分野の戦略と技術について加盟国の軍隊に助言するNATOが認定する28の専門機関の一つで、リトアニアのビリニュスに所在。2012年に設立された同センターは、産官学と連携し、NATO軍のためのソリューションを研究開発し、エネルギーのレジリエンスと効率性、重要なエネルギーインフラの安全確保を使命とする。パートナーシップの条件下で、両者はNATOの軍事施設とその運用のため原子力利用に関する共同プロジェクトに取組むことを合意した。

マイクロ炉は建設コストと工期を大幅に削減できるだけでなく、水の必要量が最小限で、ほぼどこにでも設置できるのが特徴。需要者は従来の帯域幅の制約や電力網の価格変動を回避できる。

ラスト・エナジー社のマイクロ炉「PWR-20」は単一のユニットで2kWeの電力(または8kWtの熱)を生産し、欧州全域で65基以上の商業契約を締結している。完全なモジュール式プラント設計であり、大量生産技術が採用されている。工場での製造から、輸送、サイトでの組立てまで24か月以内に実施可能であるという。ニーズに合わせた出力サイズに組立て、自動車製造工場、パルプ・製紙工場、データセンターなどの電力多消費施設に併設する。ラスト・エナジー社はフルサービスの開発者として、プラントの設計と建設、ライセンス、許認可、資金調達、運用を含むプロジェクト管理のエンド・ツー・エンドの責任を負うとしている。

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