原子力産業新聞

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ノルウェー SMR導入計画に進展

24 Jun 2024

桜井久子

ヴァードー自治体 スヴァルトネス村の所在地(矢印部分)
© Norsk Kjernekraft

ノルウェーの新興エネルギー企業ノルスク・シャーナクラフト(Norsk Kjernekraft)社は6月14日、ノルウェー最北東部フィンマルク県における小型モジュール炉(SMR)の発電所建設の評価に関する提案書をエネルギー省(OED)に提出した。発電所建設に必要な正式なプロセスの第一段階である。OEDが承認すれば、同社は環境面や技術面、経済面、および安全面の影響評価を開始する。

ノルスク社は、バレンツ海に面するフィンマルク県のヴァードー(Vardø)自治体が原子力発電所建設の候補地としてスヴァルトネス村(Svartnes)近隣を提案したことを受け、2023年6月、同自治体と調査プログラムの実施協定を締結。ヴァードー自治体とフィンマルク県のエネルギー事情、スヴァルトネス村の現地の状況を調査した。

ノルスク社の提案書によると、発電所の従業員数は200400人規模となり、フィンマルク県の主要産業となる。発電所の設備容量は最大60kWe、年間総発電電力量は最大50kWhとなり、フィンマルク県の電力供給量は現状の3倍となるため、将来の電力需要の増大に応えると予測。既存の発電所は風力タービンと小規模の河川発電所のみで、エネルギー安全保障と、戦略上重要な地域でノルウェーのプレゼンスを示す観点から、発電設備の増強の必要性を訴える。

また、ヴァードー自治区の利点として、公共サービスが充実した都市コミュニティで、多様な労働市場があるため、発電所の運転に必要な多くの労働力の提供が可能であり、送電線と変電所、良好な道路接続、港湾インフラがあり、電力集約型産業が立地できる広大な土地があることを挙げている。また、冷却水への十分なアクセス、安定した地盤条件、原子力に対する地元の政治的支援があるとも紹介している。

ノルスク社は、提案書はスヴァルトネス村近隣での原子力発電所の建設と運転に関する現地の状況を説明し、今後の影響評価で説明されるテーマを列挙しているとし、入手情報からも、発電所建設に適していると指摘した。

一方、ヴァードー自治区の送電網容量には限界があるため、ノルスク社は影響評価を開始する前にフィンマルク県で代替地を検討するとし、原子力発電所建設の可能性について調査を希望するフィンマルク県の他の自治体に対し、関心表明を呼び掛けている。

ノルスク社は2023年、ノルウェー海に面したアウレ(Aure)自治体とハイム(Heim)自治体、北極圏のナルヴィク(Narvik)自治体からも、SMR立地可能性調査の実施要請を受け、各自治体と調査プログラムの実施協定を締結。同社は202311月、ノルウェー南西部のアウレ(Aure)自治体とハイム(Heim)自治体を拠点とするSMR発電所建設に関する評価に関する提案書をOEDに提出した。また同月、エストフォル・エネルギー(Østfold Energi)社ならびにハルデン市と、かつて研究炉が運転されていたハルデン市でSMR発電所建設の実現可能性を探るため、共同で新会社のハルデン・シャーナクラフト(Halden Kjernekraft)社を設立。今年4月には、ノルウェー西岸ヴェストラン県ベルゲン市の西にあるエイガーデン(Øygarden)自治体に最大5基で構成されるSMRの発電所建設サイト候補地として、サイトの影響評価作業を開始すると明らかにした

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