原子力産業新聞

海外NEWS

加サスカチュワン州 原子力サプライチェーンの構築などでMOU

25 Jun 2024

桜井久子

カナダ中西部サスカチュワン州の州営電力であるサスクパワー社は6月17日、米ウェスチングハウス(WE)社及び加カメコ社(本社:サスカチュワン州)と、サスカチュワン州の将来のクリーン電力ニーズに向け、WE社の新型炉と関連する核燃料サプライチェーンの可能性を評価する了解覚書(MOU)を締結した

MOU締結により、WE社製の「AP1000」と小型モジュール炉(SMR)の「AP300」などWE社の新型炉を長期的な電力供給計画に向けて展開する、技術的および商業的な道筋を検討する。この枠組みで、サスカチュワン州を拠点とする、燃料も含めた原子力サプライチェーンの評価を行う。また、サスカチュワン州の大学や職業訓練校と連携して、原子力研究開発およびトレーニングで協力する機会についても検討する。

サスクパワー社は、サスカチュワン州初となるSMRの建設について、2029年に最終投資決定(FID)を行う予定だ。同社は、サスカチュワン州で建設される全原子炉を対象に、サスカチュワン州産のウラン利用を計画している。なお、同社は2022年6月、サスカチュワン州で2030年代半ばまでに導入可能性のあるSMRとして、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製BWRのBWRX-300」を採用すると発表。加オンタリオ・パワー(OPG)社がオンタリオ州内のダーリントン原子力発電所サイトで建設を計画するSMRとして「BWRX-300」を選定しており、同じ設計を選択することで、規制面や建設・運転面のコストが低く抑えられるほか、初号機建設にともなうリスクも回避されると説明している。

本MOUの締結に際し、サスクパワー社のR.パンダャ社長兼CEOは、「原子力産業において重要な専門知識を有する組織の知識の活用は、電力の将来に関して責任ある情報に基づいた意思決定を確実に行うために重要である」と指摘し、核燃料供給に係る協力と様々な技術の評価は、現在のSMR導入に係る作業とサスカチュワン州の電力システムの将来に関する計画の強化に資するとしている。

WE社のP.フラグマン社長兼CEOは、「サスクパワー社と協力して、サスカチュワン州のクリーンエネルギーのニーズを支援するため、業界をリードする当社の専門知識を共有できることを誇りに思う。今後何世代にもわたり、サスカチュワン州にカーボンフリーの電力の供給のため、サスクパワー社を支援していきたい」とサスクパワー社との協力に意欲を示した。

AP1000は米国と中国で運転中。ポーランド、ウクライナ、ブルガリアの原子力プロジェクトで採用されており、この他、中・東欧、英国、インド、北米の複数のサイトでも検討中だ。AP300は世界的に運転実績のある先進的な第三世代+(プラス)の大型炉をベースにした唯一のSMR。WE社は、2027年までにAP300の設計認証を取得し、2030年までに初号機の着工、2030年初めの運転開始を目指している。AP300は英国の大英原子力(Great British Nuclear=GBN)のSMRの支援対象選定コンペの最終候補の1つに選定されており、欧州諸国と北米の顧客も採用を検討中である。

カメコ社のT.ギッツェル社長兼CEOは、「当社はサスカチュワン州を拠点に、世界有数のウラン生産事業を展開、大規模に発展する州の労働力や北部の先住民コミュニティとの長年にわたるパートナーシップを有する。サスカチュワン州の電力の脱炭素化において、当社ならびにWE社が果たす潜在的な役割を評価できることを楽しみにしている」と語った。なお、カメコ社は、WE社の筆頭株主。

cooperation