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ノルウェー 原子力導入を検討する委員会を設立

02 Jul 2024

桜井久子

アースランド・エネルギー相(左)とハルヴォルセン委員長(右)
©Energidepartementet

ノルウェー政府は6月21日、原子力発電導入を検討する委員会を設立した。同委員会は、2026年4月1日までに政府に報告書を提出する。

同委員会は12名の専門家から構成され、オスロにある国際気候・環境研究センター(CICERO)のK.ハルヴォルセン所長が委員長を務める。同国における原子力発電所建設の将来的な可能性について、さまざまな側面から幅広く検討・評価するため、多様な分野の専門家が委員に就任している。主要なテーマ分野においては、委員会を支援し、意見する専門家グループも別途設置することとしている。

主な検討事項は以下の通り。
①ノルウェーの電力システムにおける原⼦⼒発電の適合性
②原⼦⼒に関する研究と技術開発の現状と将来展望
③導入コスト
④発電所の立地やインフラ設備の要件
⑤地域や環境への影響
⑥廃棄物問題
⑦原子力安全
⑧安全保障と核不拡散
⑨緊急時対策
⑩人材育成
⑪規制や許認可プロセスの整備の必要性など

そのほか、他の発電技術との比較や、小型モジュール炉(SMR)と従来型の原子力発電所の比較評価のほか、雇⽤や新規サプライチェーンなど、原子力発電導入による経済効果、社会的受容性の可能性など、社会的側面からの評価も求めている。

T.アースランド・エネルギー相は、「自然や気候の危機に対処し、増大する電力需要に応えるには、カーボンフリーで安定したエネルギー源が必要であり、近年の技術開発の進展や、自治体と民間企業が手を組んだ原子力発電所建設計画が、原子力に再び注目する契機となった。原子力は社会の多くの分野に影響を与えるエネルギー源。ノルウェーの電力システムに原子力を導入する場合、原子力に関する最新かつ確かな知識が必要となる」と強調する。

ノルウェーでは、1970年代に原子力導入が議論されたが、これまで原⼦⼒発電所の建設は現実的な選択肢として考慮されてこなかった。1950年代~1960年代には4基の研究炉が議会の承認を得て稼働したが、発電炉の開発、運転、規制、許認可プロセスの経験はない。

ノルウェーでは、新興エネルギー企業ノルスク・シャーナクラフト(Norsk Kjernekraft)が中心となり、SMR導入に向けた動きが加速している。同社は2023年、ノルウェー海に面したアウレ(Aure)自治体とハイム(Heim)自治体、北極圏のナルヴィク(Narvik)自治体やバレンツ海に面したヴァードー(Vardø)自治体からSMR立地可能性調査の実施要請を受け、各自治体と調査プログラムの実施協定を締結。2023年11月、ノルウェー南西部のアウレ自治体とハイム自治体を拠点とするSMR発電所建設に向けた評価に関する提案書を石油・エネルギー省(当時)に提出した。また同月、エストフォル・エネルギー(Østfold Energi)社ならびにハルデン市と、かつて研究炉が運転されていたハルデン市でSMR建設の実現可能性を探るため、共同で新会社のハルデン・シャーナクラフト(Halden Kjernekraft)社を設立。今年4月、ノルウェー西岸ヴェストラン県ベルゲン市の西にあるエイガーデン(Øygarden)自治体で、サイト影響評価作業を開始すると明らかにした。今年6月には、ノルウェー最北東部フィンマルク県におけるSMR建設評価に関する提案書をエネルギー省に提出している

 

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