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IAEAグロッシー事務局長 世界銀行に原子力への融資解禁を訴え

08 Jul 2024

桜井久子

世界銀行理事会でスピーチするIAEAグロッシー事務局長  ©IAEA

国際原子力機関(IAEA)のラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は627日、米国のワシントンD.C.で開催された世界銀行グループの理事会に出席。世銀をはじめとする国際開発金融機関(MDB)に対し、途上国における原子力発電導入プロジェクトへの融資解禁を強く訴えた

グロッシー事務局長は、持続可能な開発および発展のため、世界はクリーンで信頼性の高い、持続可能なエネルギーを大量に必要としていると指摘。脱炭素化の迅速な達成のためには、他の低炭素技術とともに原子力発電の展開を加速するよう求める新たな世界的コンセンサスが生まれつつあるとの見解を示した。そして、「アフリカからアジアまで、エネルギーミックスに原子力を加えようとする国々は、技術的・財政的支援を必要としている。IAEAは技術的専門知識を有しており、安全で確実かつ持続可能な原子力発電インフラを確立するよう支援することは可能だが、原子力発電プロジェクトには資金調達面で依然としてハードルがある」と現状を分析した。その上で、「民間の金融機関は一層、資金調達に貢献する必要があるが、世界銀行のようなMDBが、原子力プロジェクトの財政面を評価し、適切な融資を実施することにより、持続可能な開発は加速される」と強調した。

世界銀行や他MDBは現在、原子力発電所の新設プロジェクトへの融資は実施していない。一部のMDBが既存炉の改修や廃炉に融資を実施している程度だ。昨年12月にUAEのドバイで開催された第28国連気候変動枠組条約締約国会議COP28の成果文書ではCOP史上初めて、炭素排出量を削減するための重要なアプローチの1つとして「原子力」が明記され、他の低炭素エネルギー源とともに原子力導入の加速が世界的に求められている。グロッシー事務局長は、原子力発電への融資は、この「新たな世界的コンセンサス」にMDBが歩調を合わせることになると言及した。

また、COP28では25か国が2050年までのネットゼロ達成に向けて、世界の原子力発電設備容量を3倍に増加させるという誓約にも署名。同誓約では世界銀行、国際金融機関、地域開発銀行に対し、原子力を融資対象に含めるよう呼びかけており、今年3月にIAEAとベルギー政府が主催した初の原子力エネルギー・サミットにおいても、多くの国がこの呼びかけに賛同している。

国際エネルギー機関(IEA)は、気候目標を達成するためには、世界の低炭素電力の25%を供給している原子力発電設備容量を、2050年までに少なくとも倍増させることが必要であるとし、これはIAEAが2023に公表した「高ケース予測(野心的だが妥当かつ技術的に実現可能な政策シナリオ)」と一致する。2050年までに原子力発電設備容量を倍増させるには、原子力発電への投資を年間1,000億ドル(約16兆円)に倍増させる必要があるとIAEAは推定している。現在、およそ30か国が原子力の新規導入を検討または着手しており、そのうち、約2/3が開発途上国。IEAによると、世界がパリ協定の下での気候目標を達成する場合、これら開発途上国で原子力発電を大幅に拡大する必要があるという。

グロッシー事務局長は、開発途上国における原子力導入プロジェクトへの資金調達は依然として大きな障害であると指摘。新規導入国の中には、バングラデシュやエジプトなどのように、建設プロジェクトを受注した主契約者から融資を受けるケースもあるが、異なる資金調達オプションが必要となるケースも出てくるとの見方を示している。

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