チェコ 増設プロジェクトの優先交渉権を韓KHNPに
19 Jul 2024
記者会見の様子 ©Czech Government
チェコ政府は7月17日、新規原子力発電プラント建設プロジェクトの主契約者をめぐる優先交渉権を、韓国水力・原子力会社(KHNP)に与えると決定した。
検討対象となるプロジェクトは、ドコバニ発電所5、6号機増設のほか、テメリン発電所3、4号機増設で、フランス電力(EDF)とKHNPの2社が入札していた。ドコバニ発電所の増設契約の締結は来年第1四半期中を予定し、2029年までに建設許可を取得、2036年末までに試運転を開始、2038年に営業運転を開始させたい考えだ。
今回の決定を受け、チェコのP. フィアラ首相は、「チェコは、可能な限りエネルギー自給率を高め、手頃な価格でエネルギー安全保障を達成することを目指している。増設プロジェクトは、チェコの質の高い生活、繁栄、競争力向上を約束するものだ。KHNPの提案は、これらの条件を満たすと同時に、チェコの産業界がプロジェクトに約60%関与し、経済発展に大きな弾みをつけるものとなる」とコメントしている。
2社の入札評価には、国際原子力機関(IAEA)の評価モデルの勧告に従い、約200人の専門家が携わり、メガワット時あたりの電力価格を比較評価。同サイトに同時に2基を建設する場合、総事業費は1基あたり推定約2,000億コルナ(1.35兆円)となると試算されている。
Z. スタニュラ財務相は、「現在、原子力発電はチェコの電力消費の3分の1以上を賄っているが、将来的には50%まで高めたい。また、既存のサイトに2基増設するとの選択肢は、作業の多くを2度行う必要がなく、スケールメリットを得られ、1基あたり約20%のコスト削減が可能。増設への投資はさらなる投資を生み、チェコ経済に3倍になって戻ってくるという試算結果もある。熟練した雇用創出も国家財政にとり不可欠な収入源になる」と言及した。
ドコバニ発電所5号機増設の入札は2022年3月に開始され、同年11月末にEDF、KHNP、米ウェスチングハウス(WE)社は、最初の入札文書(ドコバニ5号機の増設、追加の3基:ドコバニ6号機とテメリン3、4号機の拘束力のない増設提案)を提出した。2024年1月末、政府は追加の3基も拘束力のある入札への変更を決定。WE社を除く、2社(EDFとKHNP)を入札に招聘した。同2社による応札を経て、ドコバニⅡ原子力発電会社(EDU II)は6月中旬、優先交渉権を得るサプライヤーに関する政府の最終決定のベースとなる評価報告書を産業貿易省に提出していた。
KHNPにとって、欧州では初めての建設契約となる。同社のJ. ファンCEOは、今回の選定は、国内外での原子力発電所建設プロジェクトにおける能力が評価されたものとし、「原子力事業は、建設から運転まで100年にわたる長期協力」と語った。
なお、建設プロジェクトへのチェコ企業の関与はKHNPの最優先課題の一つであり、すでに200社以上の潜在的なチェコのサプライヤーを特定し、将来の協力を念頭に、76もの覚書を締結しているという。KHNPは、引き続きチェコ産業の現地化の期待に応えるために尽力するとしている。