英国 HALEUの再転換事業に助成金
31 Jul 2024
©UK Government
英エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)は7月より、HALEU[1]U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン燃料製造計画の一環として、再転換事業を対象に助成金の申請を受け付けている。2031年までに英国にHALEU燃料の製造能力を確立することが目的で、今年1月に英政府が発表した3億ポンド(約586億円)を投じた計画の一部。
英国では、2030年代初めには先進的モジュール炉(AMR)の運転開始が見込まれている。AMRは小型モジュール炉(SMR)同様、小型でモジュール工法が可能であり、建設をより迅速かつ安価にする可能性があるため、英国の原子力復活において重要な役割を果たすと考えられている。AMRはHALEU燃料を必要とするが、HALEUを商業規模で生産するのはロシアだけ。そのためエネルギー安全保障の強化の観点から、英政府は英国と海外のAMRや研究炉への支援を実施する。HALEU燃料製造計画には、濃縮、再転換の開発、輸送能力及び関連する規制ガイドラインの策定が含まれる。
今年5月、英政府は最初の助成金1.96億ポンド(約383億円)を英国に本拠地を置く濃縮事業者のウレンコ社に拠出。同社は、英国初の商業規模のHALEU濃縮能力を確立した上で、年間最大10トンのHALEUを製造する新工場を2031年までに操業させたい考えだ。
今回の助成金の対象は、英国内での商業規模でのHALEU再転換施設。開発支援のため、最大7,000万ポンド(約137億円)の助成金を拠出する。但し、官民それぞれ7:3の割合で民間からの共同出資が必要となる。DESNZは、英国の原子力産業内で不足しているスキルを再構築しつつ、フロントエンドであるHALEUサプライチェーンの成長を促すと説明する。
助成金は以下を支援することを目的としている。
- 商業規模の酸化物HALEUの再転換施設の設計と建設
- 商業規模の金属HALEUの再転換施設の詳細設計
申請者は、英国で2031年までに稼働する商業規模の酸化物HALEUの再転換施設の設計、建設の提案をしなければならない。施設は少なくとも年間1万kgUの処理能力を持ち、将来的には少なくとも年間3万kgUまで生産拡大が可能な設計が必要。なお、HALEU市場が成長した場合を想定し、金属HALEUの再転換ラインを追加できるようにしておかなければならない。同時に、少なくとも年間5,000kgUの処理能力を持つ商業規模の金属HALEUの再転換施設の詳細設計の提案が求められている。
助成金対象者に選ばれた場合、HALEU供給パートナー及びより広範なHALEUサプライチェーン全体との協力が期待されることになる。さらに、HALEU燃料製造計画の下で資金調達が検討されている英国国立原子力研究所(NNL)との協力の可能性もある。その場合、NNLは再転換試験装置及び関連する研究開発プログラムを通じ、酸化物及び金属HALEUの再転換における英国のスキル及びノウハウの向上を行う。DESNZは、助成金対象者がNNLと協力して、プラント設計や施設操業上のリスクを軽減し、最適化することを期待している。
申請期限は9月9日で、助成期間は5年間。
脚注
↑1 | U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン |
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