原子力産業新聞

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米国 熔融塩実証炉の土木工事開始

14 Aug 2024

桜井久子

ヘルメスの完成予想図  ©Kairos Power

米ケイロス・パワー社は730日、熔融塩実証炉「ヘルメス(Hermes)」の建設予定サイトで土木工事を開始した。テネシー州オークリッジにある米エネルギー省(DOE)の「東部テネシー技術パーク(ETTP)」内に建設される。ヘルメスは昨年12月、米原子力規制委員会(NRC)が50年以上ぶりに建設を許可した非水冷却炉。

ヘルメス(熱出力3.5kW)は、2020年12月にDOEによる「先進的原子炉実証プログラム(ARDP)」の支援対象炉に選定。DOEは、同炉の設計、建設、試運転の支援のため最大3.03億ドルを資金援助することになっている。

ヘルメスは、安価でクリーンな熱生産を実証するため、TRISO燃料[1]ウラン酸化物を黒鉛やセラミックスで被覆した粒子型の燃料と熔融フッ化物塩冷却材を組み合わせて原子炉の設計を簡素化している。2027年に運開予定だ。

また、ケイロス社はロスアラモス国立研究所と提携し、同研究所の低濃縮燃料製造施設でヘルメス向けのTRISO燃料を製造するほか、テネシー峡谷開発公社(TVA)とは、設計、許認可、建設、運転等で協力する共同開発契約を締結している。

なお、ケイロス社は今年7月上旬、ニューメキシコ州アルバカーキの製造施設における最初の工学試験ユニット(ETU 1.0)でフッ化物熔融塩12トンを使った2,000時間の運転試験を完了した。ETU 1.0はヘルメスの実物大の電気加熱プロトタイプで、ヘルメスの設計、建設、運転の支援向けのユニット。熔融塩システムの試験ユニットでは世界最大規模だ。現在、ニューメキシコ州でヘルメスのモジュール設計の実証に焦点を当てたETU 2.0を建設中。最終段階のETU 3.0は、ヘルメスのサイトに隣接して建設される。

脚注

脚注
1 ウラン酸化物を黒鉛やセラミックスで被覆した粒子型の燃料

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