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スウェーデン 米国と原子力協力強化で覚書締結

16 Aug 2024

深澤伊弦

覚書に署名するブッシュ大臣(右)とグランホルム長官 🄫DOE

スウェーデン政府は81日、米国と新たな原子力発電開発に向けた両国間の協力強化をめざし、了解覚書(MOU)を締結。スウェーデンのE. ブッシュ・エネルギー・ビジネス・産業大臣兼副首相と米国のJ. グランホルム・エネルギー省(DOE)長官が同覚書に署名した。

両国は今後、サプライチェーン、資金調達モデル、次世代核燃料等に関わる政策、研究、革新的技術についてノウハウを共有する。 ブッシュ大臣は、「両国の原子力協力は、労働市場や競争力にとっても有益。今後の原子力分野での協力と知見の強化に期待している」とコメント。一方のグランホルム長官は、今回のMOUにより、サプライチェーンと核燃料供給の多様化、新規原子炉の展開、使用済み燃料管理の解決に向けて、両国の協力がさらに強化される、とその意義を強調した。なお、スウェーデンは英国ともSMR開発や規制、燃料多様化といった原子力分野で協力を行うことが、202310月に締結された戦略的パートナーシップでも明記されている。

スウェーデンは脱原子力路線を撤回し、大規模な原子力発電開発に向け、大きく舵を切っている。2022年の総選挙によって誕生した中道右派連合の現政権は、40年ぶりに原子力を全面的に推進しており、202311月には、原子力発電の大規模な拡大をめざすロードマップを発表した。同ロードマップには、2035年までに少なくとも大型原子炉2基分、さらに2045年までに大型原子炉10基分を新設することなどが盛り込まれている。

また、812日には、N. ウィクマン財務副大臣・金融市場大臣が、昨年12月に政府が任命したM. ディレン政府調査官とともに、新設のための資金調達とリスク管理について、国による補助金や差金決済(CfD)モデルの導入などを盛り込んだ報告書を発表。翌13日、国営電力のバッテンフォールがコメントを発表し、同報告書を歓迎する一方、建設リスクなど考慮すべき要素全てを反映しておらず、これから更に詳細な分析が必要と指摘した。

スウェーデンでは現在、フォルスマルク、オスカーシャム、リングハルスの3サイトで計6基(718.4kW)が運転中。2022年の原子力発電電力量は500.6kWhで、総発電電力量に占める原子力の割合は約30%だった。同国では、19805月にオスカーシャム3号機(BWR145.0kW)が着工して以降、40年以上、原子力発電所は建設されていない。

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