IAEA 原子力導入に向けた指針の中でSMRを考察
20 Aug 2024
©IAEA
国際原子力機関(IAEA)は8月9日、「原子力発電のための国家インフラ開発におけるマイルストーン」の改訂版を公開。その中で、小型モジュール炉(SMR)に関する諸問題を考察している。
改訂版は、原子力発電の新規導入または既存の原子力発電計画の拡大の準備方法に関するIAEAの基本的な指針を示し、小型モジュール炉(SMR)特有の導入問題を概説した付属文書を含む。原子力発電所導入の計画、建設、運転、廃炉の全プロセスを通じて各国の指針となる段階的手法であるマイルストーン・アプローチが定義する、3つの全フェーズを完了または大きく進展させた国の現況にも焦点を当てている。
IAEAは、「今は、多くの国がネットゼロの公約を達成するためエネルギーミックスとして原子力を検討する重要な時期。2007年の初版発行、2015年の改訂を経て、今回2度目となる改訂は時宜を得たもの」と指摘する。
今回の改訂版では、原子力発電を新規導入または拡大している国に対する最近の統合原子力基盤レビュー(INIR)ミッションから得られた教訓を取り入れている。また、今後数年の間に、新規炉の多くが大型水冷却炉となると予想する一方で、SMRが排出削減と持続可能な発展のために重要な役割を果たすとの認識を示している。SMR導入の利点として、遠隔地や送電網が貧弱な地域への導入の利便性のほか、モジュール設計による工期短縮を掲げている。なお、増大する電力需要に応えるため原子力発電導入を検討するデータセンターなどの新たなエンドユーザーや、脱炭素化を必要とする産業用途が多数あり、SMRの展開は迅速なライセンス取得と商業化の達成次第であると強調する。
IAEA原子力局のA.クロワゾー部長は、「原子力を取り巻く状況が進化するにつれて、IAEAの支援も進化していかなければならない。SMRがクリーンエネルギーへの移行に不可欠な要素であることは明白であり、SMRに関心を持つ国がプロジェクトを成功するには何が必要かを確実に理解するよう支援したい」と語った。
改訂版では、SMRは従来の原子炉とシステムの多くが共通で、法的・規制的枠組み、ステークホルダーの関与、環境保護への配慮などもほとんど同じだが、低出力や簡素化された設計などの独自の特徴により、特定のインフラ要件が異なる可能性を指摘。特に非水冷却炉のSMR導入を計画する国は、新たな形態の放射性廃棄物が発生する可能性があるため、廃棄物管理計画への留意の必要性や、新たな種類の燃料採用にあたり、安定調達を可能にするサプライチェーンの確保、新設計の特徴に対応した、新たな保障措置アプローチの開発などが重要であると言及している。
IAEAは、今年10月21日~25日にウィーンで「第1回SMRとその応用に関する国際会議」を開催する。会議ではSMR開発および展開の加速に向けた機会、課題、実現条件について議論する予定だ。