原子力産業新聞

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ノルウェー SMR建設プロジェクトを政府に提案

21 Aug 2024

桜井久子

発電所の想像図  ©Norsk Kjernekraft

ノルウェーの新興エネルギー企業ノルスク・シャーナクラフト(Norsk Kjernekraft)社は88日、複数の小型モジュール炉(SMR)で構成される原子力発電所建設に向けた評価提案書をエネルギー省に提出した。同社による提案書の提出は3件目で、今回の建設サイトはノルウェー西岸ヴェストラン県ベルゲン市の西にあるエイガーデン(Øygarden)自治体。

ノルスク社は、ノルウェー国内の複数の自治体や電力集約型産業と連携したSMRの立地可能性調査を実施し、SMRの建設・運転を目指している。エネルギー省への提案書の提出は、発電所建設に必要な正式なプロセスの第一段階。提案書はエネルギー省の他、放射線防護・原子力安全局(DSA)、ノルウェー環境庁にも送付されている。自治体や住民、産業界からのコメントを得て、エネルギー省から最終承認されれば、ノルスク社は環境面や技術面、経済面、および安全面の影響評価を実施する。提案書では、エイガーデンにおける原子力発電所の立地条件を説明するほか、原子力発電所がエネルギーと気候に関する同国の公約の達成にどのように役立つかについても説明している。提案書には調査プログラム案が盛り込まれており、調査範囲は、発電所の建設、運転、廃炉の社会的・環境的影響の評価に限定されている。

建設予定サイトはコルスネス工業地帯に隣接し、エイガーデンの前首長が所有する250エーカー(約1km2)の土地。ノルスク社は、SMR発電所の建設サイトとして同サイトを取得することを明記した意向書を前首長と交わしている。ノルスク社は、同サイトに電気出力30kWSMR5基建設する計画で、年間125kWhの発電が可能。これはノルウェーの現在の総電力消費量の約10%に相当する(既報)。

ヴェストラン県はノルウェーで最も温室効果ガス排出量の多い地域。エイガーデン自治体はすでに大規模な電力不足に陥っており、計画されている石油・ガス設備の電化プロジェクトなどが実施されると一層の深刻化が予想される。SMR発電所が立地した場合、ベルゲン市の既存および計画中の送電インフラを利用可能で、石油・ガス設備の電化、電力集約型の新産業の創設、電力の安定供給が可能となる。

ノルスク社はこれまでエネルギー省に対し、2023年11月、ノルウェー西部のアウレ自治体とハイム自治体の境界に位置する共同工業地帯でのSMR発電所建設の評価提案書を、今年6月には、ノルウェー最北東部のフィンマルク県ヴァードー自治体のスヴァルトネス村における建設の評価提案書を提出している。

なお、ノルウェー政府は今年6月、同国における将来の原子力発電所建設の可能性について様々な側面から広範なレビューと評価を行う委員会を設立した。202641日までに政府に報告書を提出することになっている(既報)。

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