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欧州でロシア製燃料からの脱却進む ユーラトム報告書

26 Aug 2024

大野 薫

©Euratom Supply Agency

欧州原子力共同体(ユーラトム)供給局は8月13日、欧州域内における燃料供給に関する2023年の年次報告書を公表。多くの国でロシア型PWR(VVER)向け燃料の供給保証が大幅に向上したとする一方、転換・濃縮サービスの多様化に関しては課題が残ると強調している。

報告書はまず、2023年の核燃料供給状況について、ウクライナ紛争の影響やロシア依存脱却に向けた供給多様化の必要性、地政学的影響に関連した供給の不確実性に直面したと指摘。同時に、一部の国による原子力発電所の運転期間延長や拡大計画、小型モジュール炉(SMR)や先進モジュール炉(AMR)などの革新炉プロジェクトの出現、さらには医療用RIの利用に対する関心の高まりにより、ヨーロッパにおける核物質の供給状況が変化していると指摘した。報告書は今後も、少なくとも中長期的には、天然ウラン、燃料加工、関連サービスに対する需要は、地政学的状況の課題やさまざまなリスクに左右されるであろうと結論付けている。

こうしたなか、EU域内(27か国)では103基の原子炉が運転中で、2023年の原子力発電電力量は5,876億kWh、総発電電力量に占める原子力の割合は約23%であった。このうち、フランス、スロバキア、ハンガリー、ブルガリアの原子力シェアは40%を超えている。EUの天然ウランの調達先をみると、カナダが約33%(4,801トンU)、ロシアが約23%(3,419 トンU)、カザフスタンが21%(3,061トンU)、ニジェールが約14%(2,089 トンU)と、EUの天然ウランの91%以上をこれら4か国が供給。このうち、カナダからの供給が前年比約86%増、ロシアからの供給も約73%増と大きく伸長した。ロシアからの供給増について、報告書は、ロシアのウクライナ侵攻による地政学的緊張を受けた、VVER用燃料備蓄の動きによる影響であり、現段階ではEUのロシア依存の高まりとして解釈すべきではないとした。

2022年以降、VVERを運転するハンガリーを除くEUの事業者(ブルガリア、チェコ、フィンランド、スロバキア)は、新たな燃料サプライヤーとの燃料供給契約を締結するなど燃料供給先の多様化に取り組んでいるが、代替燃料等が完成、認可されるまでの期間をカバーするため、既存の燃料の備蓄を積み上げている状況だ。不安定な市況に対応するため、EUの電力会社は在庫を積み増した結果、2023年のEU全体の在庫水準も約5%増加、さらに濃縮ウランの在庫も13%増加した。報告書は、大多数の電力会社は、2 回以上の燃料再装荷が可能な在庫状況にあるとし、健全なレベルを維持しているとの見方を示している。

一方で、報告書は、原子力発電に対する関心が世界的に再燃するなか、エネルギー自立を維持しつつ、気候目標を達成するためには、信頼性の高いサプライチェーンの開発に向けたさらなる取り組みが必要と指摘。特に、転換・濃縮における西側諸国の潜在的な能力不足を挙げ、これらサービス確保の重要性を強調した。そのうえで、今後、転換・濃縮サービスの安定的かつ信頼性のある供給を確保するためには、新たな生産能力へのさらなる投資が不可欠であり、原子力産業が多額の投資をできるよう、安定した予測可能な市場環境の整備、投資家に保証を与える長期契約や明確な政治的コミットメントの必要性を勧告した。なお、EU域内における転換サービスは、仏加米などの西側諸国が約66%を供給、一方、EU域内での濃縮は55%と半分以上を占めている。

報告書はまた、MOX燃料や再処理による回収ウランといった二次資源の利用が増加している点にも着目、今後10年間でこれらの利用が大幅に増加すると予測している。報告書によれば、2023年のMOXおよび回収ウランの装荷量は、天然ウラン換算で前年比44%増の481トンU、年間の原子炉所要量の3.6%を占めた。この二次資源利用の増加の傾向は今後も継続し、2034年以降は2,800トンU程度で安定すると分析している。

なお、2023年のEU域内におけるMOX燃料の装荷量(プルトニウム換算)は、前年比59%増の4,787kgとなり、これによる天然ウランと濃縮役務(分離作業単位: SWU)の節減は、天然ウランで427トンU、濃縮役務で300,000SWUとなった。1996年から2023年までのMOX燃料装荷量は、累計で24万6,009kg(プルトニウム換算)となり、天然ウランと濃縮役務の節減もそれぞれ26,626トンU、18,085,000SWUに達している。EUにおけるMOX燃料装荷量は、2008年の16,430 kg(プルトニウム換算)をピークに、徐々に減少。報告書によると、2023年にMOX燃料を利用した国は、フランスとオランダの2か国のみとなっている。

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