米TVA SMR建設に向けて追加出資
30 Aug 2024
クリンチリバー・サイトにおけるSMRの完成予想図 ©TVA
米テネシー州のテネシー峡谷開発公社(TVA)の理事会は8月22日、テネシー州オークリッジ近郊のクリンチリバー・サイトへの小型モジュール炉(SMR)建設に向けて、1.5億ドル(約217.5億円)の追加出資を承認した。
すでに2022年2月の理事会で2億ドル(約290億円)の出資を承認しており、今回の承認によりSMR建設プロジェクトは総額3.5億ドル(約507.5億円)となる。人口および経済が拡大する地域の電力供給にSMRを活用し、クリーンエネルギーへの移行の加速化をねらう。TVAのJ. ライアシュCEOは、「SMRは、米国が覇権を握るべきエネルギー革新技術。米国のエネルギー安全保障のためであり、まさに国家安全保障である」と述べた。また、テネシー州のB. リー知事は、「テネシー州民は、安全でクリーンで信頼性の高い原子力へのTVAの継続的な投資を高く評価。テネシー州は原子力エネルギー企業が投資して繁栄するナンバーワンの州となる」と今回の追加出資を歓迎している。
TVAはクリンチリバー・サイトについて2019年12月、米原子力規制委員会(NRC)より、SMR建設用地として事前サイト許可(ESP)を取得済みだ。TVAは合計電気出力が80万kWを超えない2基以上のSMRの同サイトでの建設を想定し、2016年5月にNRCにESPを申請していた。
TVAは、SMRの中でも最も実現性が高いとの判断から、2022年8月、クリンチリバー・サイトで、米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製SMRのBWRX-300(BWR、30万kWe)を建設する可能性に基づき、予備的な許認可手続きを開始した(既報)。
TVAは、先進炉の開発・導入には連邦政府による支援が不可欠であり、財務的・技術的リスク回避の観点から、複数のパートナーと連携して開発すべきとの考えだ。そのため、カナダのダーリントン新原子力プロジェクトにBWRX-300を採用した、加オンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社と2022年4月に提携で合意、SMRの設計、許認可、建設、運転について協力するほか、ポーランドにBWRX-300導入を計画する、オーレン・シントス・グリーン・エナジー(OSGE)社とも革新技術導入に伴う財務リスク低減のためノウハウの共有促進で協力する。
さらに、TVAは2022年4月、米ケイロス・パワー社が結成した北米電力会社のコンソーシアム(加ブルース・パワー社、米コンステレーション社、米サザン・カンパニー)にも参加し、ケイロス社のフッ化物塩冷却高温炉(FHR、14万kWe)の開発を支援している。2021年5月、ケイロス社と低出力(熱出力3.5万kW)のFHR実証炉ヘルメスの建設への協力を表明。クリンチリバー・サイトに近い、米エネルギー省(DOE)の東部テネシー技術パーク(ETTP)内での建設に向けて、エンジニアリング、運転、許認可手続関係の支援を実施している。
TVAは1933年、米大統領F. ルーズベルトが、世界恐慌の対策として実施したニューディール政策の一環として、テネシー川流域の総合開発と失業率対策を目的に行われた米政府による公共事業を実施する国有電力企業。現在、アラバマ州、テネシー州において3サイトで計7基の120万kW級の大型軽水炉を所有/運転する。