WNA: 世界の原子力発電所は好調な運転実績を堅持
02 Sep 2024
1970~2023年までの世界の原子力発電電力量の推移(地域別) ©WNA
英国のロンドンに拠点を置く世界原子力協会(WNA)は8月19日、世界中で稼働する商業炉の2023年の運転実績について取りまとめた報告書「World Nuclear Performance Report 2024」を公表した。
原子炉配管の応力腐食割れ(SCC)の保守作業が終了したフランスの原子力発電所が再稼働したことなどが主に影響し、原子力の総発電電力量は2022年実績の2兆5,440億kWhから2兆6,020億kWhに増加。総発電電力量に占める原子力の割合は、約9%となった。また、原子力発電設備容量は3億9,200万kWと、2022年実績から100万kW減少した一方、平均設備利用率は2022年実績の80.4%から81.5%に増加した。報告書によると、2000年以降、世界的に原子力の平均設備利用率は、プラントの新旧を問わず、総じて高めで推移していると分析している。
報告書の結論の中で、WNAのS.ビルバオ・イ・レオン事務局長は、世界の原子力発電開発推進の勢いがさらに高まっている現状をふまえ、「世界中の多くの原子炉は優れた運転実績を積み重ねてきており、これらの実績を基に今こそ新規建設を大幅に加速させる時だ」と主張した。
報告書によると、2023年末現在、世界で運転可能な商業炉は437基。2023年に5基の原子炉が閉鎖されたものの、5基が新たに送電を開始したため、2022年と比較して基数に変化はなかった。 なお、日本の商業炉は運転停止中のものも含め33基が運転可能としてカウントされている。
また、同事務局長は2023年12月に開催されたCOP28での「原子力3倍化の宣言」に触れ、目標達成のためには大幅な新規建設の拡大が必須と指摘、特に西側諸国での新規プロジェクトの成功は、資金調達、サプライチェーン、規制の課題を原子力産業界がクリアできるかどうかにかかっていると強調した。
今回の報告書のその他の主な判明事項は以下の通り。
- 原子力発電電力量の増加は、フランスが420億kWh増加したこと、中国、韓国などアジア地域での新規系統接続の増加が主な要因。
- 2023年に世界で6基の原子炉(中国5基、エジプト1基)が着工しており、いずれも大型のPWRである。
- 新たに中国、スロバキア、米国、ベラルーシ、韓国で各1基が送電を開始した一方、5基が永久閉鎖された。その内訳は、ベルギー、台湾で各1基、ドイツで3基で、いずれも脱原子力政策により閉鎖されている。
- 世界の原子炉の3分の2が、80%以上という高水準の設備利用率をマークした。地域別では、北米の平均設備利用率が最も高い。
- 炉型別で比較した場合、BWRが最も高い設備利用率を達成している。
- 2023年に送電を開始した原子炉の平均建設期間は115か月で、2021年の88か月、2022年の89か月から増加し、近年の平均よりも長期に及んでいる。
- 原子炉の運転実績は、ばらつきはあるものの、経年による低下はみられない。また、運転期間が25~35年の場合は原子炉の平均設備利用率が低く、運転期間が45年を超えると平均よりも設備利用率が高い傾向にある。
そのほか、報告書では、米国のパリセード原子力発電所(PWR, 85.7万kW)の再稼働、韓国水力原子力(KHNP)の運転期間延長、チェコのドコバニ原子力発電所(VVER-440×4基)の出力増強に関する、各々の取り組みがケーススタディとして紹介されている。