原子力産業新聞

海外NEWS

ウクライナ 新規原子力発電所の建設を計画

04 Sep 2024

桜井久子

フメルニツキー原子力発電所の完成予想図  ©Energoatom

ウクライナの原子力発電会社であるエネルゴアトム社は827日、新規原子力発電所となる、チヒリン(Chyhyryn)発電所の建設計画を明らかにした。

同発電所サイトは、同国中央部のチェルカースィ州オルビタ町の近くのチヒリンに所在。2050年までのウクライナのエネルギー戦略では、原子力発電設備容量を現在の約1,380kWeから、2,400kWeへ拡大することを掲げており、エネルゴアトム社は同計画を、ロシアのウクライナ侵攻後の復興とエネルギー安全保障の確保に向けた看板プロジェクトと位置付けている。

同サイトでは、米ウェスチングハウス(WE)社製AP1000×4基を建設する計画だ。チヒリン原子力発電所はソ連時代にも建設が進められていたが、チョルノービリ事故後の世論の圧力から、建設工事は1989年に取止めとなっていた。

この建設プロジェクトの実施に向け、チヒリン市議会は、エネルゴアトム社に対し、総面積約38 haの土地の譲渡と土地開発プロジェクトを許可した。エネルゴアトム社は、オルビタ町を復興させ、ネティシン(フメルニツキー原子力発電所)、ユジノウクラインスク(南ウクライナ原子力発電所)、ヴァラシュ(リウネ原子力発電所)のような発電所近隣にある職員の居住都市にしたい考えだ。

エネルゴアトム社は現在、ロシア型PWR=VVER-1000を採用したフメルニツキー原子力発電所34号機の建設再開に向け、準備中だ。同34号機は1980年代に着工したが、1990年から建設工事は、それぞれ75%、28%の工事進捗率で中断していた。また同発電所では、米WE社製AP1000を採用した56号機の増設プロジェクトも動き始めている。ウクライナ最高会議で「フメルニツキー3、4号機のサイト、設計、建設に関する法案」が近く審議され、採択後の3年以内に3号機を、その後、4、5、6号機を完成させる計画だ。なおWE社は、同3、4号機のVVER-1000を第3世代+(プラス)炉の安全レベルにするため、追加の安全システムの設計支援を実施している。

エネルゴアトム社は今年5月、南ウクライナ原子力発電所(VVER-1000×3基、各100kWeが運転中)の4、5号機にAP1000を採用した増設計画も明らかにしている。

cooperation