米サザン社、新型コロナウイルスの流行でボーグル3、4号機建設工事の遅れを懸念
06 Apr 2020
ボーグル4号機(2020年3月) ©サザン社
米国で約30年ぶりの新設計画としてA.W.ボーグル原子力発電所3、4号機(PWR、各110万kW)増設計画を進めているサザン社は4月1日、新型コロナウイルスによる感染の発生にともない、同増設工事の混乱や遅れなど、同社とその子会社は様々なリスクにさらされているとの認識を表明した。
これは、米証券取引委員会に対する2019年末の年次財務報告におけるリスク要因補足文書の中で同社が明らかにしたもの。これまでに世界保健機関(WHO)と連邦疾病管理予防センター(CDC)が感染の世界的流行(パンデミック)を宣言し、全米を含む多くの国にウイルス感染が広がるなか、その対応として各国は旅行や人の密集の禁止、特定のビジネスの自粛など数多くの制限を設けている。複数の電気事業子会社の供給区域にも経済活動の混乱という深刻な影響が生じてきており、資本市場では株価が乱高下した。このコロナウイルス感染拡大に関連して、サザン社の電気事業子会社は電気代を滞納中の一部顧客に対して、電気の使用停止を一時的に解除している。
感染が拡大し続けていることや政府の対応等によってサプライチェーンや資本市場にも混乱が広がり、労働力や生産性の低下、経済活動の縮小といった状況が継続、サザン社は同社とその子会社にも様々な悪影響が及ぶことになると指摘した。具体的にはエネルギー需要量の低下、特に法人需要が少なくなり、営業権や長期性資産が減損、同社と子会社が施設を設計・建設・操業したり、金融機関や資本市場から資金調達する運用にも陰りが出てくる。とりわけボーグル3、4号機に関しては、建設工事や試験の実施、その監督・支援活動にも遅れの生じる可能性も出ている。
子会社の一つであるサザン・ニュークリア・オペレーティング社はこれまで、建設サイトでウイルスの伝染リスクを軽減するため、感染症状が出た人員や感染者と濃厚接触した人員を隔離したり、作業者間で距離を取るなどの措置や手続きを実行してきた。しかし、感染者の急激な増加で建設工事のスケジュールや予算にどのような影響が及ぶか、見極めるのは今のところ時期尚早との見方を示している。
サザン社は現時点で、ボーグル3、4号機の稼働開始日程をそれぞれ、2021年11月と2022年11月に設定。3号機については昨年7月に初装荷燃料を発注したほか、同年12月には遮へい建屋に円錐形の屋根を設置した。また、4号機についても今年3月、格納容器に上部ヘッドを設置したと発表している。
(参照資料:サザン社の報告資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)