米国 熔融塩実証炉の審査に進展
12 Sep 2024
ヘルメス実証プラント ©Kairos Power
米原子力規制委員会 (NRC) は9月3日、米ケイロス・パワー社によるテネシー州オークリッジでの「ヘルメス2」実証プラント建設プロジェクトに対し、最終的な環境アセスメント(EA)を発表。「重大な環境影響はない」と結論づけた。
「ヘルメス2」は、米エネルギー省(DOE)の「東部テネシー技術パーク(ETTP)」に建設予定の「ヘルメス」(非発電炉、熱出力3.5万kW)に隣接し、フッ化物塩冷却高温炉を2基備えた発電プラント(2万kWe)。ケイロス社は2023年7月にヘルメス2の建設許可をNRCに申請した。ヘルメスは、安価でクリーンな熱生産を実証するため、TRISO燃料[1]ウラン酸化物を黒鉛やセラミックスで被覆した粒子型の燃料と熔融フッ化物塩冷却材を組み合わせて原子炉設計を簡素化している。
ケイロス社はこれらのヘルメス・シリーズで得られる運転データやノウハウを活用して、技術面、許認可面および建設面のリスクを軽減し、コストを確実化して、2030年代初頭に商業規模のフッ化物塩冷却高温炉「KP-FHR」(熱出力32万kW、電気出力14万kW)の完成を目指している。
NRCは建設許可発給の手続きにあたり、環境影響声明(EIS)を必要とする従来のNRC規則の適用をヘルメス2から免除した。ヘルメス2のサイトは以前にヘルメスのEISで既に評価されており、免除の裏付けに十分との考えだ。
NRCスタッフは、ヘルメス2の建設許可手続きの最終段階に向けて、ヘルメス2のEAおよび安全性評価報告書(SER)をNRC委員に提出。委員は、スタッフによる審査が建設許可発給に必要な所見を裏付けるものか判断し、許可発給の票決を行う。
ケイロス社は今年7月、米のバーナード・コンストラクション・カンパニーと契約し、オークリッジのヘルメスの建設サイトで土木工事(掘削作業)を開始した。両社はヘルメスに隣接し、最終となる工学試験ユニット(ETU 3.0)の建設でも協力。非原子力の実証実験装置であり、サプライチェーン、建設、運転経験の面からヘルメスを支援する。
脚注
↑1 | ウラン酸化物を黒鉛やセラミックスで被覆した粒子型の燃料 |
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