ロシアのエネルギー計画 原子力拡大方針
17 Sep 2024
クルスク第Ⅱ発電所 完成予想図 ©Rosenergoatom
ロシア国営の系統運用会社である統一電力システム(UES)はこのほど、2042年までの発電設備の配置に関する基本計画の草案を明らかにした。なお、草案の公開討論が8月20日より実施されている。
UESのD.ピレニェクス系統運用局長は9月3日、記者からのインタビューの中で、公開討論は計画手続きの透明性を目的としていると強調。これまで草案の策定にあたり、長期的な電力消費予測、さまざまなシナリオのモデリング、電力モードの計算など、1年半にわたる膨大な作業を実施。同局長は、公開討論で建設的な意見を得て、策定プロセスに係るすべての当事者に利益をもたらすようにしたいと述べ、業界とすべての利害関係者の積極的な参加を呼び掛けた。
2042年までの原子力発電設備計画の草案によると、ロシアでは既存および新規の14サイトで合計38基(約2,375万kWe)を新設。閉鎖予定の原子炉のリプレースとなる大型炉および小型モジュール炉(SMR)を新設する他、電力系統の運用面で大型炉の設置が出来ない極東地域では中型炉を設置する。一方、運転期間を満了する原子炉の閉鎖は約1,040万kWe規模。この計画の実現により、2042年には原子力発電設備容量は、現在の総発電設備容量の11.7%から15.3%に拡大。総発電電力量に占める原子力発電の割合は現在の18.9%から23.5%になると予測している。国営原子力企業のロスアトムは、露大統領の指示により、2045年までに総発電電力量に占める原子力発電の割合を25%にすることを目指している。
草案に示される具体的な新設計画、運転開始時期は以下の通り。
- コラ第Ⅱ原子力発電所(ムルマンスク州)
2035~2040年、VVER-S/600×3基(PWR)、計180万kWe - クルスク第Ⅱ原子力発電所(クルスク州)
2025~2034年、VVER-TOI×4基(PWR)、計480万kWe - スモレンスク第Ⅱ原子力発電所(スモレンスク州)
2033~2035年、VVER-optimum×2基(PWR)、計240万kWe - ノボチェルカスク原子力発電所(ロストフ州)
2036~2038年、VVER-optimum×2基(PWR)、計240万kWe - レフティンスク原子力発電所(スベルドロフスク州)
2041年、BN-optimum×1基(高速炉)、125.5万kWe - 南ウラル原子力発電所(チェリャビンスク州)
2038~2040年、BN×2基(高速炉)、計251万kWe - クラスノヤルスク原子力発電所(クラスノヤルスク地方)
2037~2042年、BN×4基(高速炉)、計502万kWe - 鉛冷却高速実証炉(トムスク州)
2028年、BREST-OD-300×1基、30万kWe - プリモルスク原子力発電所(沿海地方)
2039~2042年、VVER-S/600×2基(PWR)、計120万kWe - ハバロフスク原子力発電所(ハバロフスク地方)
2036~2038年、VVER-S/600×2基(PWR)、計120万kWe - ノリリスクASMM(SMR)(クラスノヤルスク地方)
2032~2037年、RITM-400×4基(PWR)、計32万kWe(電力消費者との合意後に実施) - ヤクーツクASMM(SMR)(サハ共和国)
2030~2031年、RITM-200N×2基(PWR)、11万kWe(内、1基は、電力消費者との合意後に実施) - チュクチASMM(SMR)(チュクチ自治管区)
2030年、SHELF-M×1基(PWR)、1万kWe(電力消費者との合意後に実施) - バイムスキーMPEB(SMR)(チュクチ自治管区)
2027~2031年、RITM-200C×8基(PWR)、計42.4万kWe(浮揚式原子力発電所、電力消費者との合意後に実施)
11.~14.は、僻地にありUES系統からは独立している。原子力発電設備容量の最大の増加は、電力消費量の高い成長率を示す、シベリア、極東、ウラル地方で予想されている。近代的な原子力発電所の建設により、これら地域の経済成長と産業の発展を支援するという。基本計画は年内に政府の承認を得る予定。