ロシアで送電開始後40年経過した高速原型炉の運転期間を5年延長
07 Apr 2020
BN-600 ©ロスエネルゴアトム社
ロシアの民生用原子力発電公社のロスエネルゴアトム社は4月1日、同国中央部スベルドロフスク州のベロヤルスク原子力発電所で、3号機として1980年から稼働しているナトリウム冷却高速原型炉「BN-600」(FBR、60万kW)の運転期間が2025年まで5年間延長されたと発表した。
同発電所で実施した研究の結果から、BN-600は技術的に2030年まで運転継続可能であることが実証されたと所長のI.シドロフ氏は明言している。ロスエネルゴアトム社と同じく、ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社傘下の設計会社アトムプロエクト社が現在、同炉の運転をさらに延長するための投資プロジェクトを策定中であり、2024年にこの作業を完了する予定。ロスエネルゴアトム社はこれを受けた後、同炉の運転を2025年以降2040年までの期間、運転継続するための申請書を連邦環境・技術・原子力監督庁(ROSTECHNADZOR)に提出する方針である。
ロシアは国内のエネルギー需要を満たしつつ、天然ウランと使用済燃料の有効活用が可能な核燃料サイクルを確立するため、高速中性子炉の実用化を進めている。「BN-600」に加えて電気出力1.2万kWの高速実験炉「BOR-60」が1969年12月からディミトロフグラードで稼働しているほか、80万kW級の高速実証炉「BN-800」もベロヤルスク4号機として2016年10月から営業運転中。120万kW級の商業用高速炉「BN-1200」(ベロヤルスク5号機)についても建設準備が進行中である。
また、これらのナトリウム冷却高速炉開発と並行して、鉛冷却高速炉の研究開発も進めるという「ブレークスルー(PRORYV)」プロジェクトでは、出力30万kWの鉛冷却高速実証炉「BREST-300」をトムスク州セベルスクのシベリア化学コンビナート(SCC)で建設することになっている。
「BN-600」の運転開始当初に許された運転期間は30年間で、ロスエネルゴアトム社は30年目に当たる2010年に運転期間を2025年まで15年間延長することを計画。2009年に、安全性関係すべてをカバーする大規模な設備の最新化プログラムを開始した。空気熱交換器を使った緊急冷却システムやバックアップ用の制御盤を設置するなど、機器類の点検とアップグレードで膨大な作業を実施。2010年には最新の安全基準に完全に適合していることが確認されており、同社はこれに基づき運転期間の15年延長が可能と考えていた。
しかしROSTECHNADZORは、交換できない機器の能力実証を追加で要求した後、2020年まで10年間だけ運転の延長を認める許可を発給。ロスエネルゴアトム社によると、その後これらの関係作業はすべて完了しており、同国のエンジニアリング企業で元実験機械製造設計局のOKBMアフリカントフ社や構造材中央研究所「プロメティ」は、同炉で運転をさらに継続することは技術的に可能との結論を明示。これに基づき、ROSTECHNADZORが2025年までの延長を承認している。
(参照資料:ロスエネルゴアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月1日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)