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ブラジル アングラ3号機の建設工事継続に肯定的評価

19 Sep 2024

桜井久子

アングラ3号機の建設現場 © Eletronuclear

ブラジルで原子力発電事業を展開するエレトロニュークリア(Eletronuclear)社は93日、同社によるアングラ原子力発電所3号機(PWR140.5kWe)の建設プロジェクトについて、ブラジル国立社会経済開発銀行(BNDES)による技術的、経済的、法的妥当性に関する調査報告明らかにした

アングラ3号機は2031年の営業運転の開始を目指している。BNDESの調査によると、建設プロジェクトを放棄する場合のコストは210億レアル(約5,517億円)を超える可能性があると指摘する一方、建設完了には約230億レアル(約6,042億円)と大差はないことが判明。なお、同機の建設に既に投資された額は、約120億レアル(約3,152億円)であるという。また、調査報告では、653.31レアル(17,163円)/ MWhの電気料金が提案されているが、これは同地域の火力発電所の平均665.00レアル(17,470円)/ MWhよりも低い料金となっているほか、建設プロジェクトに対し、税制上の優遇措置がとられる可能性を指摘した。なお、本調査結果は、エレトロニュークリア社から鉱山エネルギー省 (MME) および同社の株主(エレトロブラス社他)に送付され、MMEはそれを国家エネルギー政策委員会 (CNPE) に提出。CNPEが最終的にアングラ3号機を完成させるか否かを決定することになっているという。

調査報告を受け、エレトロニュークリア社のR. リカーゴ社長は、「アングラ3号機の建設工事を放棄するコストも安くはない。工事の継続と、競争的な料金体系の提案をするための重要な契機となった。作業は間もなく開始され、ブラジルの原子力部門が再び活性化すると確信する」と述べた。

また調査報告によると、アングラ3号機の完成にはエレトロニュークリア社自身と銀行のコンソーシアムが資金を提供することになるが、建設プロジェクトを放棄すれば、融資返済や契約解除に伴う違約金などの210億レアルを短期返済する必要がある。既に投資した約120億レアルの損失と合わせ、これらの費用は国の負担となり、最終的には消費者への電力料金に転嫁されると指摘した。

エレトロニュークリア社はアングラ3号機の完成の利点として、発電コストの高い火力発電所を代替して電力ミックスにおいて重要な役割を担うほか、温室効果ガス削減への貢献も挙げる。また、アングラ発電所は電力消費地に近いため送電ロスを最小限に抑えるとともに、燃料生産から発電まで、ブラジルの原子力部門のサプライチェーンを拡大させ、多くの間接雇用に加えて、建設作業のピーク時には7,000人の直接雇用を創出するという。

エレトロニュークリア社は、ブラジルの電力大手のエレトロブラス(Eletrobras)社(旧電力公社で20217月に民営化法が施行)の傘下企業。エレトロニュークリア社は、アングラ発電所1号機(PWR64kW)と2号機(PWR135kW)を運転し、両機による発電量は、ブラジルの総発電電力量の2.2%2023年実績)を占める。1984年に始まったアングラ3号機の建設工事はこれまでに、景気の後退や関係する汚職調査等により1986年、2015年の2度、中断。202211月に工事は再開したが、地元自治体は20234月、社会環境補償の未払いや環境影響などの問題を理由に、エレトロニュークリア社に建設工事の禁止を命じた。しかし、同社は今年6月、リオデジャネイロ司法裁判所での控訴を勝ち取り、建設工事の禁止措置は解除された。今年3月から5月にかけて、アングラ3号機の建設作業の完了を目的とし、エンジニアリング、調達、建設(EPC)サービスの入札契約の草案に対する公開協議を実施している。なお、現時点における同機の建設進捗率は66%

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