原子力産業新聞

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フィンランド SMR導入プログラムが始動

24 Sep 2024

桜井久子

© Helen

フィンランドのヘルシンキ市が保有するエネルギー企業のヘレン(Helen)社は9月9日、ヘルシンキ市に熱供給を行う小型モジュール炉(SMR導入するプログラムを立ち上げたことを明らかにした。

同社は、プログラムの第一段階でビジネスモデルを確立、SMRの炉型および供給者、建設候補サイトを決定する。この第一段階は、2026年に完了を予定している。

ヘレン社は、2030年までに地域熱供給における化石燃料を利用停止する目標を掲げている。同社の地域熱供給ネットワークは全長1,400kmに及び、北欧諸国の中で最大規模。このネットワーク全体の脱炭素化のため、ネットワークの近くに設置可能な、安定した信頼性の高い、電力に依存しない熱源が必要であり、同社は実証済みの技術による、熱のみ、または電気と熱の両方を生産するSMRを導入する計画である。なお、同社は石炭火力発電所を来春までに全廃予定であり、バイオエネルギーやヒートポンプ、電気ボイラーによる熱供給では不十分であるため、新たな熱源の導入が急務となっている。

ヘレン社のO. シルッカCEOは、「順調に進めば、2030年代初頭までにヘルシンキに熱供給するSMR初号機が完成する。石炭火力発電の代替は、現実的には原子力発電が唯一の選択肢。地域熱供給の半分を原子力発電、半分を電気でまかなうのが最適であり、太陽光発電や風力発電にも多額の投資を行っている」と述べる一方で、「SMRの規制が厳しくなり、地域熱供給ネットワークと接続するSMRを建設できなくなると、地域暖房の価格が上昇する」との懸念を示した。なお、シルッカCEOによると、ヘレン社は2023年10月にフィンランドの熱供給用SMRの商業化を目的に設立されたスタートアップ企業のステディ・エナジー(Steady Energy)社と同社製SMR活用に関する基本合意書を交わしているが、実現可能性のあるすべてのSMRを検討していくという。ステディー社が開発する熱供給専用のSMR「LDR-50」(5万kWt)については、フィンランドの原子力規制当局(STUK)が8月末に、ステディ社からLDR-50の予備的な安全性評価の実施要請されたことを明らかにした。STUKは、原子力法による許認可手続きとは別に、安全要件を満たしているかどうかを評価する。なお、ステディ社は、地域暖房用の原子力発電所の建設について、フィンランドのクオピオン・エネルギア(Kuopion Energia社と今年7月、事前準備の実施で合意している。

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