ウクライナ エネ安全保障強化に向けIEAが勧告
25 Sep 2024
©IEA
国際エネルギー機関(IEA)は9月19日、軍事紛争により大きな制約を受けているウクライナのエネルギーインフラの状況を検証した報告書「Ukraine’s Energy Security and the Coming Winter」を公表した。報告書は、ロシアによるウクライナのエネルギーインフラに対する攻撃が激しさを増すなか、冬が近づくにつれ深刻なリスクが生じていると指摘、今後数か月間、ウクライナ国民が電力と暖房に確実にアクセスできるよう、迅速なアクションと追加支援の必要性を勧告している。
ウクライナのエネルギーシステムは、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻以来2年連続で冬を乗り越えてきたものの、2024年春以降、発電所、熱供給プラント、送電網などに対する攻撃が激化したことにより、同国のエネルギーインフラは大きな負担にさらされている。報告書によると、8月下旬の大規模な攻撃以前にも、既に紛争前の発電能力の3分の2以上は、破壊や損傷、占拠により利用できず、夏期も計画停電やプラントの計画外停止が多発、水供給など日常生活のあらゆる側面に影響を及ぼしている。さらに、報告書は、冬が近づくにつれ、状況がさらに悪化する可能性を指摘。利用可能な電力供給とピーク需要との間に大きなギャップが生じ、真冬には病院、学校、その他の主要機関にさらなる深刻な混乱をもたらす可能性を指摘したほか、主要都市への熱供給のリスクにも言及、さらに平均気温が低い場合は、国内の天然ガス供給を圧迫する可能性がある、と警鐘を鳴らしている。
これらをふまえ、IEAは、ウクライナとその国際パートナーがこれらのリスクに対処しつつ、将来の脆弱性を軽減するための、以下のエネルギー対策10項目を勧告した。
- 重要なエネルギーインフラの物理的およびサイバーセキュリティの強化
- 修理用機器とスペアパーツの配送の迅速化
- 電力供給の増強と分散化
- 欧州連合(EU)との送電容量の拡大
- エネルギー効率化への投資継続、および省エネ、デマンド・レスポンスの実施
- 冬季暖房用のバックアップ・オプションの準備
- 天然ガスの備蓄レベルの増強
- EUからのガス輸入能力の強化
- エネルギーシステム等で密接に関係する、ウクライナの隣国モルドバとの調整[1] … Continue reading
- EUのシステムと統合された、市場ベースの、回復力のある持続可能なエネルギーシステムの基礎の構築
F. ビロルIEA事務局長は、ウクライナの現況は、世界で最も差し迫ったエネルギー安全保障問題の一つであり、「今冬はこれまでで最も厳しい試練となるであろう」と懸念を示す一方、10項目の勧告が迅速かつ効果的に実施されれば、大きな効果が期待できる、との見方を示している。
脚注
↑1 | 報告書によると、モルドバは電力の約3分の2を、ロシア軍が駐留するトランスニストリアにある大規模発電所から供給。今後、2024年末にウクライナ経由のロシアのガス輸送協定が終了予定であることから、モルドバの電力の供給保証に大きな不確実性をもたらしている。 |
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