原子力産業新聞

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金融機関14社が原子力発電への支援を表明

25 Sep 2024

桜井久子

2022年に閉鎖されたが再稼働を目指している米パリセード原子力発電所 ©Holtec International

米ニューヨークで922日~29日にかけ、気候イベント「Climate Week」が開催されている。サイドイベントとして923日に開催された「原子力を3倍にするファイナンス」(Financing the Tripling of Nuclear Energy)では、世界有数の金融機関14社が、世界的な低炭素経済への移行において原子力発電が重要な役割を果たすとの認識で一致。原子力発電プロジェクトに対するファイナンス支援を表明した。

同イベントには、米バイデン大統領の気候政策担当顧問のJ. ポデスタ氏を含む各国政府関係者のほか、金融業界および原子力など産業界の幹部らが出席。今回、原子力発電への支援を表明した金融機関は以下の通り。

  • アブダビ商業銀行  Abu Dhabi Commercial Bank
  • アレス・マネジメント  Ares Management
  • バンク・オブ・アメリカ  Bank of America
  • バークレイズ  Barclays
  • BNPパリバ  BNP Paribas
  • ブルックフィールド  Brookfield
  • シティ  Citi
  • クレディ・アグリコルCIB  Credit Agricole CIB
  • ゴールドマンサックス  Goldman Sachs
  • グッゲンハイム証券  Guggenheim Securities LLC
  • モルガン・スタンレー  Morgan Stanley
  • ロスチャイルド&カンパニー  Rothschild & Co.
  • セグラキャピタル・マネジメント  Segra Capital Management
  • ソシエテ・ジェネラル  Societe Generale

金融機関はこれまで、プロジェクト・ファイナンスの複雑さとリスクの高さに加え、原子力発電が環境・社会・ガバナンス基準に適合しているか疑問があるとして、原子力発電への姿勢が分かれていた。世界銀行をはじめとする多国間金融機関は、原子力プロジェクトへの融資をいっさい行っておらず、結果的に原子力プロジェクトは資金調達の厳しさから高コスト化する傾向にある。

金融機関が今回、原子力発電への支援を表明した背景には、昨年、UAEのドバイで開催された第28回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)で、「パリ協定」で示された1.5℃目標の達成に向け、2050年までに世界の原子力発電設備容量を3倍に増加させるという野心的な「原子力の三倍化宣言」に、日本をはじめとする米英仏加など25か国が署名したことがある。また、COP最終日に採択された成果文書である「UAEコンセンサス」では、COP史上初めて、炭素排出量を削減するための重要なアプローチの1つとして「原子力」が明記された。

「原子力の三倍化宣言」では、原子力プロジェクトに対するファイナンスについても取り上げ、世界銀行を筆頭とする国際金融機関並びに各国の金融機関等に対し、原子力を融資対象に含めることのほか、新しい資金調達メカニズムなどを通じ、原子力発電への投資を奨励していた。また、フランス・パリのOECD本部で919日~20日に開催された、第2回「新しい原子力へのロードマップ」閣僚会議における政府コミュニケにおいても、既存炉の運転期間延長や新規プラントの建設、小型モジュール炉(SMR)の早期導入を可能にする措置を講じ、原子力の可能性を最大限に引き出すため、参加国22か国による協力を強調するとともに、適宜、国際金融機関や多国間開発銀行の関与を求めることに言及している。

 

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