原子力産業新聞

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スウェーデン政府 新設にむけて予算計上

27 Sep 2024

桜井久子

記者会見の模様 © Government Offices of Sweden

スウェーデン政府は2045年までにネットゼロ達成に向けて、非化石電源を強力に推進する方針で、2025年予算案ではエネルギー供給の拡大と安定確保のため、原子力のパイロット・実証プロジェクトへの投資を含む10億スウェーデン・クローネ(SEK)(約143億円)以上を計上し、9月19日に議会へ予算案を提出した。

9月9日に開催された予算案に関する記者会見で、E. ブッシュ副首相兼エネルギー・ビジネス・産業相は、「より多くの電力を最も必要とされる場所に供給するため、より多くの投資を行い、強固な電力システムの構築を継続、新エネルギー技術の研究開発も強化する」と発言した。R. ポルモクタリ気候・環境相は、「原子力発電への投資、受容の向上策は、政府の打ち出す幅広い施策のカナメである」と説明。N. ウィクマン財務副大臣・金融市場大臣は、「原子力発電は計画的な導入が可能で、国家の成長における重要な要素。現在、原子力発電プラント新設の資金調達モデルについて緊急に取り組んでいる」と語った。

政府は、将来の増大する電力需要を満たし供給安定性を高めるためには、新規原子力発電の導入が必須であり、原子力発電の拡大を可能にする政府の取組みは現在、より集中的な段階に入っていると言及。その条件整備として2025年予算案の中で、以下を含めている。

  • 原子力分野における革新的ソリューションの研究開発を目的としたパイロットおよび実証プロジェクトへの支援に1億SEK(約14.3億円)
  • 新規原子力プラントの効率的な許認可手続きに向けたガイダンスの策定、許認可手続きに係る関係当局間の調整環境の整備のため、スウェーデン環境保護庁の予算を250万SEK(約3,580万円)増額。
  • 新規原子力発電に向けた条件整備に3,000万SEK(約4.3億円)。2026年および2027年に、それぞれ3,500万SEK(約5億円)、2,500万SEK(約3.6億円)を計上する見込。

U. クリステション首相は9月10日、議会における施政方針演説で、国内の全原子炉の半数の閉鎖による、スウェーデン南部での電力不足の事例に言及。「電力供給を確保し、脱炭素への移行を成功させるため、政府はエネルギー政策を抜本的に見直し、エネルギー分野における研究とイノベーションでは原子力を特に優先している。エネルギー政策なしに、気候政策はない」と強調した。

スウェーデンは脱原子力政策を撤回し、大規模な原子力発電開発に向け、大きく舵を切っている。2022年の総選挙によって誕生した中道右派連合の現政権は、40年ぶりに原子力を全面的に推進しており、2023年11月には、原子力発電の大規模な拡大をめざすロードマップを発表した。同ロードマップには、2035年までに少なくとも大型炉2基分、さらに2045年までに大型炉10基分を新設することなどが盛り込まれている。

政府は現在、原子力発電プラント新設の条件の大幅な改善に向けて、政府による融資保証、差金決済 (CfD)、リスクシェアリング・メカニズムを含む資金調達モデル案を検討している。今年8月には、ウィクマン財務副大臣・金融市場大臣が、昨年12月に政府が任命したM. ディレン政府調査官とともに、資金調達モデルの導入などを盛り込んだ報告書を発表している(既報)。

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