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フィリピン 韓国の協力でバターン原子力発電所の完成を模索

11 Oct 2024

桜井久子

MOU調印式 © Department of Energy Philippines

フィリピンのエネルギー省(DOE)と韓国水力・原子力(KHNP)107日、フィリピンのマラカニアン宮殿において、F. マルコス大統領と韓国のY. ソンニョル(尹錫悦)大統領の立会いの下、エネルギー分野の協力に関する覚書(MOU)を締結した。本MOUにより、韓国はDOEと協力して、フィリピンにあるバターン原子力発電所(BNPP)の修復に向け、包括的な実行可能性調査を実施する。

フィリピンでは1985年に東南アジア初の原子力発電所となるバターン原子力発電所(米ウェスチングハウス社製PWR、62万kWe)がほぼ完成したが、1986年に発足したアキノ政権は、同年のチョルノービリ原子力発電所事故の発生を受け、安全性及び経済性を疑問視し、運転認可の発給を見送った。その後、急速なエネルギー需要が国産エネルギーの開発や輸入エネルギーの増加でも賄えない場合に備え、1995年から原子力発電の導入について検討が始まったが、2011年3月の福島第一原子力発電所事故を受け、再度原子力発電開発を断念した。

BNPPの実行可能性調査は20251月に開始され、初期段階で改修が難しいと判断された場合、新規の大型炉もしくは小型炉の建設の検討も視野に入れる。なお、韓国はKHNP、韓電KPS、斗山重工業で構成される韓国チームが2008年と2017年に実施した調査により、BNPPに精通している。今回のBNPPの実行可能性調査に関連するすべての費用はKHNPが全額負担。フィリピン政府は調査後、さらなる評価を行うこととしている。

また今回のMOUにより、KHNPBNPPの調査だけでなく、他の炉型やサイト候補地の調査を実施し、フィリピン政府の意思決定プロセスの指針となる重要な情報提供も行う。

フィリピンは20222月の大統領令により、原子力をエネルギーミックスに統合するプロセスを開始する決定を明確にした。人口増加が続くフィリピンでは、慢性的な電力不足が続いているほか、電力は輸入化石燃料への依存度が高く、発電のおよそ60%を石炭火力が占め、現在、エネルギーセキュリティーと環境影響の観点から原子力発電の導入を目指している。

また、フィリピンは、最新のフィリピン・エネルギー計画(PEP2023-2050において、2032年までに最初の原子力発電所を稼働させ、その後、2035年までに240kW2050年までに480kWへと拡大する目標を示している。原子力発電は、エネルギーミックスの多様化、エネルギー安全保障の強化とともに、人材への投資を促進して労働生産性を向上させ、計画期間内の温室効果ガス排出量削減のための費用対効果の高い選択肢としての役割が期待されている。また、従来の加圧水型原子炉(PWR)と比較してより迅速な展開につながる可能性がある小型モジュール炉(SMR)またはマイクロ炉がコスト競争力のあるエネルギー供給源の代替案となり、送電網のない地域への持続可能な電力供給源となる可能性があると指摘する。

DOEの主導により、原子力エネルギー計画機関間委員会(NEP-IAC)が組織され、同委員会の下で、国際原子力機関(IAEA)の新規導入国向けのガイドラインであるマイルストーンドキュメントに沿って、整備すべき19項目に対応する6つの小委員会が設置されている。9月には、オーストリアのウィーンで開催された第68IAEA総会において、DOES. ガリン次官が一般討論演説の中で、原子力ロードマップ(NEP)を発表。原子力規制機関の設立のほか、原子力安全に焦点を当てた重要法律の推進を強調した。また、原子力発電の利用を進める中で、公衆衛生と環境を保護し、国家安全保障を維持する法的・規制的枠組みを確実に整備することが政府の優先事項であるとしている。

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