原子力産業新聞

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カナダ 使用済み燃料の燃焼処分炉を開発

18 Oct 2024

桜井久子

SSR-WとWATSS複合プロセスの完成予想図
© Moltex Energy

モルテックス・エナジー・カナダ社は103日、使用済み燃料を利用する安定塩炉廃棄物バーナー (Stable Salt Reactor-Waste BurnerSSR-W) のユニークな能力を実証する新たな研究を発表した。モルテック社は「SSR-W」によって、クリーンなエネルギーを生産しながら放射性廃棄物を大幅に削減、クローズド・サイクルの実現を目指す。

SSR-Wは熱出力120kW、電気出力30万~50kWの第4世代のピン型熔融塩高速炉。熱エネルギー貯蔵タンクを備え、電力需要のピーク時の対応や水素製造、地域暖房、工業用熱供給などに利用可能だ。

カナダのニューブランズウィック州、オンタリオ州のほか、英国や米国にも拠点を置くモルテックス・チームによる共同研究。研究発表では、カナダのCANDU炉の使用済み燃料バンドルに含まれる超ウラン元素(TRU)の大部分を消費できると強調している。SSR-Wは、原子炉内の核分裂の過程で生成され数千年にわたり放射性を持つTRUを燃料として消費するように設計されており、放射性廃棄物を削減する革新的アプローチであるという。SSR-WによるTRUの消費量は年間425㎏、全運転期間を通じて約25トンに達する。照射サイクルを繰り返すことで、すべてのTRUは減少し、中でも最も懸念されるPu-239の割合が著しく低下するという。

なお、SSR-Wは自身の使用済み燃料を無制限にリサイクルすることができ、新たな燃料を投入する必要はない。SSR-Wの配備が計画されている、カナダのポイントルプロー原子力発電所(CANDU70.5kWe)の運転期間中を通じて排出される26万の燃料バンドルのリサイクルによって、SSR-W60年間の運転が可能。これは、使用済み燃料を一度か限られた回数しかリサイクルできない他の先進炉と比較しても優位性があるという。なお同炉は、20215月にカナダ原子力安全委員会(CNSC)による「許認可申請前ベンダー設計審査(VDR)」のフェーズ1を完了した。

モルテックス社は、使用済み燃料をSSR-Wで消費できる形に変換するためのリサイクルプロセスであるWATSSWAste To Stable Salt)システムも開発し、SSR-Wに併設する計画だ。TRUはウランおよび核分裂生成物とともに抽出され、SSR-Wの燃料となる。WATSSは純粋なプルトニウムを分離生成できないため核拡散抵抗性に優れているという。同社はまた、最終廃棄物の処分について、カナダの確立されたルートで処分できるよう、カナダの核燃料廃棄物管理機関(NWMO)との協力を実施中である。

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