原子力産業新聞

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スロバキア SMR導入で米国から新たに助成金

22 Oct 2024

桜井久子

ボフニチェ原子力発電所  © Slovenské Elektrárne

スロバキアは10月8日、米政府の原子力エネルギー移行促進(NEXT)プログラムから小型モジュール炉(SMR)の建設に適したサイト選定を包括的に支援する、500万ドル(約7.5億円)の助成金を獲得したことを明らかにした。これにより2025年末までにサイト選定を完了させる。

米国のJ. ケリー元・米気候問題担当大統領特使が立ち上げたNEXTプログラムは、SMR導入間近のパートナー諸国への技術支援が目的。今回の助成金は昨年、米国が主導する石炭火力発電所からSMRによる原子力への転換プログラムである「プロジェクト・フェニックス(Project Phoenix)」下で、石炭火力発電所跡地でのSMRの実行可能性調査(F/S)の実施に向けた200万ドル(約3億円)の助成金授与に続くものだ。プロジェクト・フェニックスとNEXTプログラムは、米国務省の「SMRの責任ある利用のための基礎インフラ(FIRST)」プログラムのサブプログラムの位置づけである。

本助成金は、スロバキアの大手原子力事業者であるスロバキア電力のほか、スロバキア経済省、スロバキア工科大学、スロバキア原子力規制庁、スロバキア電力・送電システム社、エンジニアリング会社のVUJE、U.S. Steel Košice(在スロバキアの米製鉄企業)が国際入札に共同参加して獲得。NEXTプログラムは、SMR建設のための意思決定と、その実施のための能力開発に係わる活動を支援する。支援される具体的なプロジェクトは、SMRの技術的・規制的要件に関するコンサルティング、大学や原子力施設との協力、SMR導入戦略の策定など。スロバキア電力によると、2025年までにSMRの実行可能性調査(F/S)を終え、2029年までに環境影響評価(EIA)を含むSMRの初期設計と許認可手続きを完了、2035年の運転開始を目指している。既に米国務省の選定によって技術、コンサルティング支援を行う米エンジニアリング企業のサージェント&ランディ(Sargent & Lundy, L.L.C)社のスタッフがスロバキアを訪問し、F/S実施に向けた初期の現地調査を実施している。

スロバキア電力のB. ストリチェクCEOは、電力需要が増大する中、SMRはスロバキアの電力需要の大部分をカバーする既存の原子力発電所をリプレースできるものではないものの、エネルギーミックスを補完し、エネルギーセキュリティを高めるものだと強調した。

スロバキア電力の所有設備は、2023年のスロバキアの総発電電力量の70%以上を賄っている。ボフニチェ(3、4号機、各VVER-440)とモホフチェ(1、2号機、各VVER-440)の両発電所の他、31の水力発電所を稼働させている。2024年3月には石炭火力発電所をすべて閉鎖し、脱炭素電源100%を達成した。なお、モホフチェ発電所では追加の2基(3、4号機、各VVER-440)を建設中で、3号機は2023年1月に送電を開始した。スロバキア政府はまた、今年5月にボフニチェ発電所5号機(最大120万kWe)の新設を承認した。

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