欧州原子力アライアンス 次期欧州委員会に原子力の貢献を認めるよう勧告
24 Oct 2024
欧州原子力アライアンスの会合 © European Union
欧州原子力アライアンスは10月15日、次期欧州委員会(EC)[1]現EC委員の任期は2024年10月31日まで。任期は5年。に対し2024-2029年の欧州の脱炭素化プログラムにおいて、原子力と再生可能エネルギーの貢献を認めるよう、共同声明を発表した。ECのエネルギー理事会(Energy Council)がルクセンブルクで開催されたのを機に、同アライアンスは会合を開催、声明を発表したもので、会合にはEU加盟14か国と欧州委員会の閣僚や上級代表が出席した。
同アライアンスは2023年2月にフランスが中心となり、原子力発電を利用する国々の協力イニシアチブとして発足。現在12か国が加盟、2か国がオブザーバー参加[2] … Continue readingし、域内における原子力への支援拡大に向けた働きかけを強めているところ。EUでは現在、総発電電力量に占める原子力の割合は25%で、低炭素電力に占める割合は50%と半分を占めている。
共同声明は、世界的な地政学的変動の中で、2024年から2029年までの次期欧州委員会の任務は、欧州経済の競争力と強じん性を確保しながら2050年までの気候中立の達成に向け、技術中立的なアプローチを採用し、あらゆる解決策の活用によって欧州の脱炭素化を追求することである、と指摘。そのうえで、原子力は、再生可能エネルギーと並んで、化石燃料を使用せずに電力の需要増に対応し、気候変動を緩和するためのコスト競争力のある解決策であり、安定したベースロード電源であることから、供給安定性と電力市場において必要な柔軟性の両方を併せ持つ、とその優位性を強調している。
また、アライアンスは今年3月、強固な欧州の原子力産業を育成し、発電および非発電用途の核物質、とりわけ核燃料の供給保証を確保する欧州の枠組みの設定に向けて、以下に掲げる4つの行動の柱を提示したことを紹介。これら4つの柱に関して、アライアンス内や志を同じくする他のEU加盟国及び欧州委員会との協力を強化すると表明している。
- 大型炉、小型モジュール炉(SMR)および関連する欧州のバリューチェーンを支援するための民間および公的資金へのアクセスの拡大、欧州の資金調達手段の可能性と利点の追求
- すべての民生用原子力利用のため、熟練した多様な原子力労働力の開発
- 具体的なプロジェクトを通じた、欧州のバリューチェーン全体での産業、研究、イノベーションの連携の拡大
- エネルギーミックスの脱炭素化に関する全ての加盟国の選択を尊重、結束の強化
共同声明では、「既存及び新規の原子力発電所のメリットは、原子力を選択する加盟国の国境を越える。水力や原子力のような低炭素ベースロードのエネルギーは、我々の共通グリッド及び欧州電力市場全体を安定させ、原子力発電および再生可能エネルギーは、欧州連合にとって真の共有資産」と原子力の価値を改めて強調。さらに、「原子力発電は、そのベースロード特性と低い運転コストにより、市場環境の変動が少ない。このようなエネルギーがなければ、EUが2050年までにネットゼロを達成しつつ、市民に手頃な価格で信頼性があり、豊富な低炭素エネルギーを提供する道はない」と明言した。これらをふまえ、アライアンスは、次期欧州委員会に対し、統合エネルギーシステムの将来に向け、技術中立的なアプローチを採用して、再生可能エネルギーとともに原子力の役割を十分に認識し、エネルギー政策のパラダイムシフトの実現を勧告している。