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仏フラマトム ハンガリーのVVER向けに燃料供給

29 Oct 2024

桜井久子

契約締結式 © Framatome

仏フラマトム社とMVMパクシュ原子力発電所は1025日、ハンガリーで唯一稼働する、パクシュ原子力発電所(ロシア型PWR=VVER-440×4基)へ2027年から長期燃料供給の契約締結を発表した。本契約は、20239月にハンガリー・エネルギー省とフラマトム社が署名した覚書に基づいている。

ハンガリーのC. ラントス・エネルギー大臣は、「パクシュ原子力発電所は40年以上にわたり、安全に、安価でクリーンな電力を供給してきた。国際的なエネルギー危機の中でも電力価格の維持に貢献している。同発電所は国内の発電電力量の約半分を供給し、安定した電力供給とともに、気候目標を達成する上で重要な役割を果たしている。今回の契約により、エネルギー供給源の多様化を拡大し、エネルギー安全保障をさらに強化していく」と述べた。

MVMパクシュ原子力発電所のP. ホルヴァスCEOは、「電力会社であるMVMグループの戦略的目標は、パクシュ発電所の運転期間延長なしには達成できない。今回の契約は、現在の運転期間を超える初の燃料供給契約となる」と言及。14号機は現在、それぞれ運転期間の20年延長により、2032年~2037年まで運転が可能となっている。

現在、EU域内では18基のVVERが稼働しており、100kWe級のVVER-1000はブルガリアとチェコで各2基ずつ、50kWe級のVVER-440はチェコで4基、フィンランドで2基、ハンガリーで4基、スロバキアで4基の計14基が稼働中。国際情勢を背景にフラマトム社は、ロシア製燃料への輸入依存や関連サービスの供給中断のリスク低減のため、燃料の設計から製造、燃料部品のサプライチェーンをEU域内に配置、100%欧州主権を実現できる唯一の燃料サプライヤーとして、VVER用燃料の設計開発と供給を加速させている。

フラマトム社は今年6月、欧州連合(EU)から1,000万ユーロ(約16.5億円)の資金拠出を受け、欧州原子力共同体(ユーラトム)の研究トレーニングプログラム下で、VVER-440向けの燃料開発と供給を目的とした「Safe and Alternative VVER European(SAVE)」プロジェクトを実施中。なお、2018年からVVER-1000の燃料設計にも取組んでおり、2022年12月にはブルガリアのコズロドイ発電所と同6号機(VVER-1000)への2025年から2034年までの10年間の燃料供給契約を締結したほか、今年10月にはチェコ電力と燃料の効率性と安全性向上を目的にVVER-1000の燃料開発に関する了解覚書を締結している。

首都ブダペストの南にあるパクシュ原子力発電所で稼働する14号機(VVER-440×4基)は、1982年から1987年にかけて運転を開始。現在、同発電所に隣接して、パクシュ原子力発電所建設プロジェクトが進められている。56号機を増設、出力120kWeVVER-1200を採用する。既存の4基の運転期間を延長しながら、56号機に徐々にリプレースしていく方針。同プロジェクトには、主契約者であるロシア企業に加え、ハンガリー、米国、フランス、ドイツ、オーストリア、スイスの企業が下請けでプロジェクトに参加する。現在、5号機の掘削作業が進行中であり、年内に初コンクリート打設を予定している。56号機が稼働すると、原子力発電電力量のシェアは70%となり、天然ガス消費量を30億㎥、CO2排出量を1,700万トン削減できるという。

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