米テラパワー HALEU製造施設の建設契約を締結
08 Nov 2024
Natrium® 完成予想図 © TerraPower
米国の原子力開発ベンチャー企業であるテラパワー社は10月30日、HALEU[1]U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウランの供給拡大に向け、米ASP アイソトープ社と、①南アフリカにおけるウラン濃縮施設の建設、②テラパワー社が開発するナトリウム冷却小型高速炉「Natrium」への燃料供給―に関するタームシート[2]最終契約の締結にいたるまでの過程で、契約書に盛り込むべき重要事項をまとめたものを締結した。
テラパワー社は、米ASP アイソトープ社による南アフリカでのHALEU製造施設の建設に出資し、同施設で製造されるHALEUを購入。米ワイオミング州南西部のケンメラーで開発されているNatriumおよびエネルギー貯蔵システムに利用する計画である。購入したHALEUは、テラパワー社と米エネルギー省(DOE)が先進炉実証プログラム(ARDP)を通じて共同出資する、米グローバル・ニュークリア・フュエル(GNF)社がノースカロライナ州ウィルミントンのサイトに建設する燃料加工施設で加工される。
テラパワー社のレベスクCEOは、「当社は『Natrium』用に安定したHALEUサプライチェーンを確保するために懸命に取り組んできた。今回の合意は、国内および同盟国におけるHALEU製造の商業化に向けた当社の取組みの一例」と強調した。テラパワー社は、米国内でHALEU製造促進に向け、複数の戦略的契約を締結している。その中には、HALEUの商業化に関するセントラス社とのMOU、HALEU金属化パイロットプラントの建設に関する仏フラマトム社との契約、ワイオミング州産ウランの供給可能性に関するウラニウム・エナジー社との調査契約が含まれる。
ASP アイソトープ(ASPI)社は2021年に設立されたが、前身は1980年代の南アフリカにおけるウラン濃縮プログラムにさかのぼる。さまざまな業界で使用されるアイソトープ製造の技術とプロセスの開発を専門とする先端材料企業。HALEUウラン濃縮施設の建設とNatriumへの供給は、ASPIの子会社である米Quantum Leap Energy 社が行う。ASPI社によると、濃縮施設で製造される予定のHALEUの長期供給契約も締結される予定であり、テラパワー社は施設の完成後10年間で製造されるHALEUの独占購入権を持つことを想定している。また、ASPI社がHALEUの供給について第三者と交渉したり、別のASP技術べースのウラン濃縮施設に取組まないようにする独占期間を示す条項がタームシートには含まれているという。
ASPI社は、従来の遠心分離プロセスを使用した濃縮施設の建設と比較して、大幅に低いコストと短い時間で、自社の濃縮技術をHALEU製造施設に導入できると考えている。従来、医療や半導体業界向けの高濃縮同位体の製造と商業化に重点を置くが、開発中の濃縮技術を使用し、原子力発電分野向けの同位体濃縮を実施する計画だ。
Natrium は34.5万kWeのナトリウム冷却高速炉。熔融塩を使ったエネルギー貯蔵システムを備え、電力負荷の変化に追従する柔軟な運転が可能。米ワイオミング州で閉鎖予定の石炭火力発電施設の近くに建設され、今年6月には起工式が開催された。今年3月末に米原子力規制委員会(NRC)に建設許可を申請している。原子力部分の着工は早くて2026年、運転開始は2030年を予定している。