米国とウクライナ SMR導入プロジェクトで連携
26 Nov 2024
エネルゴアトム社が協力覚書を締結するSMR開発会社 © Energoatom
アゼルバイジャンのバクーで開催された国連気候変動枠組条約第29回締約国会議 (COP 29)会期中の11月16日、米国のB. ジェンキンス国務次官(軍備管理・国際安全保障担当)とウクライナのG. ガルシェンコ・エネルギー相は「小型モジュール炉(SMR)の責任ある利用のための基礎インフラ(FIRST)」プログラム下で実施する、三つのプロジェクト・パートナーシップを発表した。気候目標の達成、エネルギー安全保障、経済成長、先進的な原子力エネルギー利用において、ウクライナの戦後のリーダーシップ展望を支援するのが目的。
FIRSTは米国務省(DOS)が主導し、核セキュリティ、原子力安全、核不拡散に関する最高レベルの国際水準の下で、エネルギー安全保障とクリーン・エネルギーの目標達成にSMRの可能性を探る国々を支援する。発表イベントには、駐アゼルバイジャンY. フシェフ・ウクライナ大使、米エネルギー省(DOE)M. ゴフ次官補代理、米アルゴンヌ国立研究所P. カーンズ所長、米電力研究所(EPRI)N. ウィルムハースト上級副所長も参加し、3,000万ドル(約46.2億円)を投じて、以下の三つの支援プロジェクトを開始する。
- SMRクリーン燃料パイロットプラント建設(フェーズ2)(Clean Fuel Project)
ウクライナにSMRパイロットプラントを建設し、農業肥料の主成分である水素とアンモニアの生産を実証する。日本、韓国、ウクライナ、米国の多国籍官民コンソーシアムによって実施(COP 27で発表されたフェーズ1に続く)。 - プロジェクト・フェニックス
中・東欧で進行中のプロジェクト・フェニックスを拡張し、ウクライナの石炭火力発電所を既存インフラを活用したSMR発電所にリプレースし、人材の再訓練を促進する。サイト調査と実現可能性調査を実施、包括的な送電網の統合戦略を策定し、石炭からSMRへの転換に関する助言を行う。 - SMRによるクリーン・スチール・ロードマップの作成(Clean Steel Project)
SMRを利用した、ウクライナ鉄鋼産業の再建、近代化、脱炭素化のためのロードマップを作成、技術支援を行う。鉄鋼の生産にSMRによる電力、プロセス熱、水素を利用する道を開く。
ガルシェンコ・エネルギー相はオンライン・スピーチで、「ウクライナは原子力に未来を託している。我が国はチョルノービリ事故を乗り越え、現在はロシアによる欧州最大の原子力発電所であるザポリージャ発電所の占拠という前代未聞の困難に直面しているが、既存の原子力発電所の近代化、新規原子力発電所の建設計画を実行し、前進を続ける」と語った。
ウクライナでは、老朽化やロシアの攻撃により損傷した火力発電所のSMRへのリプレースを検討するほか、SMRの建設候補地として、チョルノービリ原子力発電所の周辺ならびに立入禁止区域内も検討されている。今年10月初め、国家立入禁止区域管理庁(SAUEZM)、原子力発電会社エネルゴアトム社、およびチョルノービリ原子力発電所の専門家が現地を視察、これらの場所がSMR建設に適しているか技術的な検討を行っている。なお、エネルゴアトム社は、エネルギー戦略の一環としてSMR導入計画を進めており、SMR開発会社と多くの協力覚書を締結している。