ノルウェー SMR導入で米韓企業と協力
27 Nov 2024
Xe-100 © X-energy
ノルウェーの新興エネルギー企業ノルスク・シャーナクラフト(Norsk Kjernekraft)社は11月18日、ノルウェーにおける小型モジュール炉(SMR)導入の検討に向けて、米国の先進炉開発企業であるX-エナジー社と了解覚書(MOU)を締結したことを明らかにした。
これに先立ち、ノルスク社は今年8月下旬、韓国のDL Energy社ならびにDL Engineering & Construction(E&C)社と協力協定を締結している。韓国の両社もノルスク社、X-エナジー社と共に、SMR導入に向けた検討作業に参画する。
ノルスク社のJ. ヘストハンマルCEOは、「ノルウェーは原子力に関する専門知識が欠けていると指摘されており、海外からの支援提供は有難い。韓国は原子力発電所の効率的な建設および運転の経験が豊富であり、米国は最先端の技術を持っている。世界有数のテック企業であるAmazon社のX-エナジー社への出資に関する最近の発表は、今回のMOUの重要性を際立たせるものだ」と述べ、今回のMOU締結によって、ノルウェーの複数の自治体へのSMR導入に向けて、DL社およびX-エナジー社のノウハウの活用への期待を示した。
DL Energy社ならびにDL E&C社は、韓国の化学と建設事業のコングロマリットであるDLグループの傘下企業で、複数の原子力発電所の建設事業に携わる。韓国政府は今年9月、韓国海外インフラ・都市開発公社(KIND)を通じて、DL社に助成金を拠出した。ノルスク社やX-エナジー社と共同実施する、ノルウェー南西部ベルゲン郊外のアウストレイムにあるモングスタッド工業地帯を対象とした「ノルウェーSMR開発・運転プロジェクト予備実現性調査」への支援が目的で、KINDが助成する初のSMR関連の調査であるという。KINDは2018年に韓国政府によって設立され、海外プロジェクトの計画や実現可能性調査など、グローバルな官民パートナーシップ(PPP)事業の支援組織体。株主には韓国政府と韓国輸出入銀行を含む。
モングスタッド工業地帯はノルウェー最大のCO2排出地域であり、同国のネットゼロの目標達成には、この地域への原子力発電導入がカギとなる可能性がある。ノルスク社は2030年代半ばにはSMRを運開させたい考えだ。
X-エナジー社のA. ブラック・シニアディレクターは、「先進炉『Xe-100』とTRISO燃料は、従来設計と比べて、本質的に安全で、費用対効果の高い新世代原子力の代表格。ノルウェーの工業ならびに輸送部門の脱炭素化を支援し、急成長する人工知能とクラウドコンピューティング部門による電力需要の増大に対応していきたい」と語り、協力への意欲を示した。
X-エナジー社製SMRの「Xe-100」は電気出力8万kWの小型高温ガス炉で、TRISO燃料(3重被覆層・燃料粒子)を使用。連結して32万~96万kWの発電容量への拡張が可能。米エネルギー省(DOE)が2020年、先進的原子炉実証プログラム(ARDP)で5~7年以内に実証(運転)を目指し、支援対象に選定した二つの設計のうちの一つである。X-エナジー社はARDPの一環として、米・大手化学メーカーであるダウ・ケミカル社のテキサス州メキシコ湾沿いにあるシードリフトの製造施設において、Xe-100を4基連結させた発電所の建設を計画する。加えて、テネシー州オークリッジで、商業規模のTRISO燃料製造工場の建設プロジェクトを進めている。