スイスNAGRA 深地層処分場建設サイトの概要承認を申請
29 Nov 2024
地下処分施設と暫定防護区域 © National Cooperative for the Disposal of Radioactive Waste (NAGRA)
スイスの放射性廃棄物処分の実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は11月19日、深地層処分場ならびに地上における使用済み燃料の封入プラントの「概要承認」をスイス連邦エネルギー庁(SFOE)に申請した。
概要承認は、処分場と封入プラントのサイトを確保し、両施設の基本的な特徴を定義するもの。建設段階へ進む前の重要なマイルストーンである。
スイスでは原子力法に基づき、原子力発電所から発生する高レベル放射性廃棄物(HLW)ならびに医療、産業、研究活動から発生する低中レベル放射性廃棄物(L/ILW)をすべて深地層処分することになっている。深地層処分場は、スイス北部のアールガウ州とチューリッヒ州を跨ぐ「北部レゲレン」の地下800mに建設する計画だ。オパリナス粘土層の岩盤にHLWとL/ILW両方を安定的に閉じ込め、処分する複合型施設である。チューリッヒ州のハーバーシュタルに同処分場の入り口など、主な「地上施設」を建設するほか、アールガウ州ビュレンリンゲン村にある「ツビラーグ集中中間貯蔵施設」の敷地内に使用済み燃料の封入プラントを建設する。
今後数か月をかけ、スイス連邦原子力安全検査局(ENSI)や原子力安全委員会(NSC)などの関係当局が必要書類を確認し、その後、NAGRAは申請書類全体とすべての科学報告書を2025年春頃に一般に公開することとしている。NAGRAのM. ブラウンCEOは、「世代を超える深地層処分プロジェクトは、可能な限り広範に議論される必要があり、直接的な民主的プロセスを経て、正当化されるべき。これには国民投票も含まれる」と記者会見で述べた。
現在の計画では、連邦参事会(内閣)が2029年に、連邦議会(国会)が2030年に「概要承認」の可否を決定する予定。なお、国民投票が必要となる場合には2031年に実施される予定だ。建設ならびに操業許可は別途申請が必要であり、順調にいけば、建設許可取得後、2034年には初期建設作業を開始。操業許可を取得後、2050年にL/ILWの処分開始、2060年にHLWの処分開始を計画している。
NAGRAは今回の概要承認申請で、処分施設の最大容量を予備容量を含め、HLW用に2,500㎥、L/ILW用に100,000㎥として申請。加えて、地下処分場や処分場にアクセスする坑道を建設するため、26㎢を放射性廃棄物処分に適切な暫定防護区域として申請し、この区域内に建設される処分施設の敷地は2㎢程度と見積もっている。なお、区域内では、採石作業や地熱探査などの従来の地下活動には制限はないものの、一定の深度を超えるボーリング孔の掘削には連邦当局の認可が必要となる。
NAGRAは、2008年から約14年にわたって複数のエリアを調査した結果、北部レベレンの岩盤が地下の非常に深い位置にあり、放射性廃棄物に必要なオパリナス粘土層の厚み(約100m)やその上下の岩石層(約300m)による安定性から、バリアとしての効果が高い地質であると判断。スイス連邦政府に2022年9月、放射性廃棄物を長期間、安全に処分する深地層処分場に最良の立地点として、「北部レゲレン」を提案していた。