米IT大手メタ社 原子力から電力調達へ
05 Dec 2024
© Meta Platforms, Inc.
「Facebook」を運営し、「Instagram」や「WhatsApp」などを傘下に収める米IT大手のメタ・プラットフォームズ社(Meta)は12月3日、2030年代前半に原子力発電から電力調達することを目指し、来年2月7日まで事業提案を募る、提案依頼書(Request for Proposals:RFP)を発行すると発表した。
生成AI(人工知能)によるデータセンターの電力需要急増に対応するとともに、脱炭素化を達成することを目指している。メタ社は2030年代前半に、合計出力100万~400万kWeの小型モジュール炉(SMR)、または大型炉の稼働開始を検討している。複数基の展開により大幅なコスト削減を実現し、地域社会への関与、開発、設計、エンジニアリング、許認可、資金調達、建設、運転に関する知見や能力を有する事業者からの提案を歓迎するとしている。
メタ社は同発表に際し、「原子力発電は、データセンターとその周辺コミュニティの両方に電力を供給する安定したベースロード電源。クリーンで、信頼性が高く、エネルギー移行の中で極めて重要な役割を果たすと確信している」との認識を示した。
同社は、原子力プロジェクトは資本集約的であり、開発には長期間を要すること、多くの規制要件の対象となり、長い運転期間が見込まれるため、原子力プロジェクトの開発ライフサイクルのより早い段階で関与する必要性を指摘。同型プラントのシリーズ建設こそが、コストを迅速に削減する最大の要因と捉え、選定されたパートナーと戦略的に取り組むとの考えを示している。
近年、IT企業大手の間では、原子力発電を活用する動きが急速に拡大している。その背景には、より複雑かつ推測力の高い処理を必要とする大規模言語モデルを基盤技術とする、生成AIの進化がある。これに伴い、データセンター利用の増加ならびに電力需要の指数関数的な増加が予想されている。IT企業各社は、環境への取組みとしてカーボンニュートラル(CN)の達成を目標に掲げ、投資を続ける太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーの最大限活用をアピールするが、いずれも自然環境の影響を受けやすく、AIの台頭によってCNの目標達成は難しくなっているのが現状だ。そのため、安価で安定した電力供給が可能な、原子力発電への期待が高まっている。
なおこれまでに、米国のMicrosoft社、Amazon社、Google社が、原子力発電からの電力調達計画を明らかにしている。
・Microsoft社
2024年9月、大手電力会社のコンステレーション・エナジー社と閉鎖済みのスリーマイル・アイランド(TMI)1号機(PWR、89万kWe)を2028年をメドに再稼働させ、Microsoft社のデータセンターに電力を供給する、20年間の売電契約の締結を発表。
・Amazon社
2024年3月、傘下のアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)社が、ペンシルベニア州にあるサスケハナ原子力発電所(BWR、133.0万kW×2基)に隣接するデータセンターを買収。同年10月には、先進炉開発企業X-エナジー社に、同社製SMRを2039年までに合計500万kWe以上稼働させるべく、約5億ドル(約750億円)の出資を発表。
・Google社
2024年10月、米原子力新興企業のケイロス・パワー社と同社が開発する先進炉を複数基、合計最大50万kWeを2035年までに導入し、Google社のデータセンターに電力を供給する、電力購入契約(PPA)を締結。