米国 旧原子力サイトにSMRを建設へ
16 Dec 2024
IMSRの完成予想図 © Terrestrial Energy
原子力発電所の廃止措置や環境復旧サービスを手掛ける米国のエナジー・ソリューションズ社は12月4日、カナダのテレストリアル・エナジー社と協力覚書(MOU)を締結。テレストリアル社が開発する小型モジュール炉(SMR)の一体型熔融塩炉(IMSR)を、エナジー・ソリューションズ社サイトに建設することを目指す。
今回のMOUにより、両社はIMSRの早期配備に向けて、エナジー・ソリューションズ社が廃炉プロセスで取得した旧原子力発電所サイトを共同で評価し、最適なサイトを選択する。エナジー・ソリューションズ社が電力事業者のドミニオン・エナジー社から取得し、廃炉作業を実施中のキウォーニ1号機(PWR、59万kWe、2013年閉鎖)などのサイトを、将来の新たな原子力発電所の建設候補地として、活用できないか検討する。
エナジー・ソリューションズ社のK. ロバックCEOは、「生成AI(人口知能)の運用を支えるデータセンターや、戦略的目標の達成のために分散型クリーンエネルギーソリューションを求める産業などの成長により、クリーンで安定した電力需要が急速に増加している。テレストリアル社のIMSRプラントは、先進炉であり、高まる電力需要に応える高性能な供給ソリューションとして注目を集めている」との認識を示した。
テレストリアル社のS. アイリッシュCEOは、「エナジー・ソリューションズ社にはIMSRの立地選定と展開に必要となる規制手続きを支援する豊富な経験とノウハウがある。エナジー・ソリューションズ社の他、100万kW規模のクリーンで安定した電力と熱供給の長期契約に関心のある他プロジェクト関係者、および州や連邦政府とのパートナーシップを築いていきたい」とし、協力の進展への期待を述べた。
テレストリアル社のIMSRは、熱出力40万kW、電気出力19.5万kWの熔融塩炉。低コストでクリーンかつ信頼性の高い電力と産業用熱を生産する。他の先進炉設計の多くがHALEU燃料(U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン)を装荷するのに対し、IMSRは濃縮度5%以下の標準タイプの低濃縮ウランを使用する。化学、石油およびガス、石油化学、データセンター、およびその他のエネルギー集約型の産業を支える分散型エネルギー源として期待されている。またIMSRは、米原子力規制委員会(NRC)と加原子力安全委員会(CNSC)による、非軽水炉型原子炉の初の共同技術審査対象炉でもあり、2030年代初めの運転開始を目指している。