インド 小型炉の民間提案を募集
16 Jan 2025
Ⓒ NPCIL
インド原子力発電公社(NPCIL)は12月31日、22万kWeのバーラト小型炉(BSR、バーラトはヒンディ語で「インド」の意味)の建設に向け、民間部門からの提案依頼書(RFP)募集を開始した。提案締切りは2025年3月31日。
BSRは、自家発電用に設計された国産の加圧重水炉(PHWR)。鉄鋼、アルミニウム、銅、セメントなどのエネルギー集約型産業における石炭火力発電所の代替を目指している。インドにおけるPHWRは22万kWから54万kW、70万kWと進化し、すべての出力サイズで順調に稼働している。これらのPHWRに必要なコンポーネントや機器を供給する国内サプライ・チェーンも成熟している。
BSRは工場での部品製造、現地組立てによって建設時間を短縮。堅牢な安全性と効率性を実証済みであり、費用対効果に優れ、脱炭素化が困難な分野において安定したクリーンな電力供給源として期待されている。NPCILは、BSRは経済的利点、特に炭素排出税に関連するコストの削減によってインドの産業の国際競争力が強化されるとの考えだ。
2024年7月、N. シタラマン財務相は2024~25年度の連邦予算で民間部門と提携し、BSRの展開やバーラト小型モジュール炉(BSMR)の研究開発等を支援する方針を発表。今回のRFPの実施は、現行の法的枠組みと合意されたビジネスモデルに基づき、初の民間部門の参入を認める原子力開発計画の一環である。
1962年制定の原子力法により、原子力部門は中央政府に独占的権限が与えられ、民生用原子力発電所の設置と運転を許可されているのは、原子力省(DAE)傘下のNPCILとバラティヤ・ナビキヤ・ビデュト・ニガム社(BHAVINI、高速増殖原型炉PFBRの建設と運転主体)のみ。2016年の原子力法改正によりインド国営火力発電会社(NTPC)のような政府系公社だけがNPCILと提携が可能となった。民間部門の原子力発電への関与はエンジニアリング/調達/建設(EPC)の役割に限定され、原子力インフラ開発の補助的役割を担ってきた。原子力安全や放射性廃棄物管理の問題、核拡散リスクの面から、民間部門の参入は依然として制限事項が多いものの、今回、民間部門との提携が認められたことで、新規原子力発電所の資金調達に新たな道が開かれた意義は大きい。
NPCILは、BSRの設計、品質保証、運転と保守、廃止措置までを実施。原子力発電所の立地、建設、試運転、および運転と廃止措置の認可は、NPCILが原子力規制委員会(AERB)から取得。選定された民間事業者は、NPCILの監督・監督下で資金調達と土地取得の上で2基のBSRを建設する。建設完了後、BSRはNPCILに移管され、長期にわたる運転・保守管理(O&M)契約の下で運営される。発電した電力は事業者が使用でき、DAEが承認した価格での売電も可能。なお事業者は、プロジェクトの開始から、損害発生時の復旧作業および廃止措置を含むライフサイクル全体に必要なコスト(税および保険費用込み)をすべて負担する。燃料や使用済み燃料、重水の所有権はDAEが有する。
インドは、2070年までにネットゼロの実現を掲げている。エネルギーミックスにおける原子力シェアの拡大に向けて、DAEは原子力発電設備容量を現在の818万kWから2031年までに2,248万kWの約3倍に、2047年までに1億kWに増強するという野心的な目標の達成を目指しており、民間部門の原子力参入は重要な一歩となる。