原子力産業新聞

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エストニア 原子力発電所のサイト選定を開始へ

24 Jan 2025

桜井久子

サイト候補地域(2か所) © Fermi Energia AS

エストニアの新興エネルギー企業であるフェルミ・エネルギア社は114日、経済通信省に、電気出力60kWの原子力発電所建設に向けて、サイト調査手続きを開始する申請をした。

同社のK. カレメッツCEOは「これにより安全性、環境影響、技術的実現可能性の要件を満たす、原子力発電所サイトの適地を見つけることが可能になる。手続き開始が原子力発電所建設とイコールではないが、近年の電力需要の増加により、エネルギーシステムの安定性を守り、今後数十年にわたって電力料金を引き下げるため、制御可能で信頼性の高いエネルギー源が必要であることは明白だ」と語った。

本申請の準備に向けて、フェルミ・エネルギア社は過去6年間、住民を対象とした説明会を16か所の自治体で50回以上実施し、500人以上が参加した。西ヴィル郡ヴィル・ニグラ、ならびに東ヴィル郡リュガヌスの各自治体議会は、それぞれ20239月、20243月、サイト調査への参加を決定した。

フェルミ・エネルギア社の考える原子力発電所の建設完了までの計画は以下のとおり。

  • サイト候補地の事前選定(20252027年)
    候補地を評価するための関連調査と協議を実施。フェルミ・エネルギアが実施した予備調査によると、候補地は、西ヴィル郡クンダ近郊のヴィル・ニグラと、東ヴィル郡リュガヌセのアー村の人口の少ない地域に所在。自然保護区域は回避。
  • サイト検証(20272029年)
    選定サイトと原子力発電所のサイト条件との適合性を確認するため、詳細な調査を実施。
  • プラントの建設段階(2029年~)
    計画プロセスの完了。エストニア議会(リーギコグ)による原子力規制法の採択後、2029年に建設許可申請を管轄の規制当局に提出。手続きが順調に進めば2031年に着工。2035年後半には初号機が運転開始。

今回の申請は、6年間にわたる詳細な計画と分析の結果であるという。32ものパートナー機関・企業との協力を得て、71件の調査を総費用140万ユーロ(約2.3億円)をかけて実施した。

エストニアの新興エネルギー企業のフェルミ・エネルギア社は、米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製SMRBWRX-300」(BWR30kWe)を2基を備えた原子力発電所の建設を計画している。エストニアの現在の電源は、化石燃料、特にオイルシェールが大半を占める。2050年までに排出量実質ゼロを達成することを掲げており、国内のオイルシェール利用の段階的廃止を開始する2035年までにエネルギー・ミックスを多様化するため、信頼性が高く低炭素な電源の選択肢として原子力発電に注目。小規模なバルト海電力市場、再生可能エネルギー、供給目標、欧州の水素市場の発展の可能性を考慮し、水素製造が可能なSMRの導入可能性を検討した。炉型の選択にあたっては稼働実績と燃料供給の安定性を重視し、20232月にBWRX-300を選定した。リーギコグは翌年6月、エストニアにおける原子力導入支援に関する決議を採択。これにより、政府は原子力安全法の起草、必要に応じて既存の法律の改正・補足、原子力の規制組織の設立、および専門家の育成を実施していくこととしている。

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