米マイクロ炉 買収によりブランド名変更
27 Jan 2025
KRONOS MMR © NANO NUCLEAR ENERGY, INC.
米国の先進原子力エネルギー会社である、ナノ・ニュークリア・エナジー(NANO Nuclear Energy)社は1月14日、新たに取得したモジュール式マイクロ炉(MMR)をKRONOS MMRに名称変更した。同社は、MMRを開発していた米国のウルトラ・セーフ・ニュークリア(USNC)社から、原子力技術資産の一部を取得した。
USNC社は2024年10月、米国破産法第11章第363条に従い、自社技術の売却プロセスを実施することを発表。競売により、NANO社がUSNC社の原子力技術資産の一部を現金850万ドル(約13.3億円)で買収、手続きが1月13日に完了した。
USNC社のMMRは、ヘリウムを冷却材に使用する第4世代の小型モジュール式高温ガス炉。5エーカー(0.02㎢)未満のコンパクトな設置面積で、最大4.5万kWt(1.5万kWe)の出力で柔軟に動作するように設計されている。燃料は、低濃縮ウラン(LEU)またはHALEU燃料を使用する。
NANO社のJ. ユー会長は、「MMRは、カナダ原子力研究所(CNL)および米イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(UIUC)で開発され、カナダ原子力安全委員会(CNSC)の許認可の審査段階に入った最初の原子炉。当社は、MMRの規制当局への許認可手続きと最終的な商業化の取組みを継続する」と語った。
NANO社は、カナダ初のマイクロ炉であるMMRの建設と実証運転を目的としたグローバ・ファースト・パワー(GFP)社のプロジェクトの一環として、CNLのオンタリオ州にあるチョークリバー研究所に設置、実証する計画を継続する方針である。GFP社は加オンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社とUSNCが設立した合弁事業体。チョークリバー研究所でのMMR建設に向けて、2019年3月にSMR開発プロジェクトとしては初めて、カナダ原子力安全委員会(CNSC)に「サイト準備許可(LTPS)」を申請した。
またNANO社は、UIUCとの既存の協力を延長し、同大学におけるMMRの稼働を計画。加えて、NANO社は米原子力規制委員会(NRC)とのMMR許認可プロセスを継続するとしている。UIUCは2021年6月、USNC社製MMRを将来学内で建設するため、NRCに意向表明書(LOI)を提出している。
NANO社は、MMRは開発段階が進んでいるため大幅な開発コストを回避しつつ、導入スケジュールを大幅に短縮することができると、今回の買収の意義を強調。今回新たに取得したMMRは、NANO社独自の可搬型マイクロ炉「ZEUS」ならびに「ODIN」(0.1~0.15万kWt)の設計開発を通じて確立した技術基盤を強化・補完するものであるとし、実証に向けた動きを加速したい考えだ。今後、大規模なデータセンターや人工知能(AI)センター、その他の製造およびインフラにおけるエネルギー集約型産業など、エネルギー需要の高い成長市場に幅広く対応をしていくとしている。
また翌15日には、USNC社から併せて取得した可搬型の高温ガス冷却マイクロ炉「Pylon」をLOKI MMRに名称変更した。NANO社はLOKI MMRが10kWeから3,000kWeまで出力調整が可能な、着陸船に適した形状で設計されていることから、特に長期的な宇宙探査への原子力利用の取組みを補完したいとしている。NANO社は、米エネルギー省(DOE)の選定による、国立原子炉イノベーションセンター(NRIC)の基本設計・実験機設計(Front-End Engineering and Experiment Design:FEEED)を通じて、2027年までに米アイダホ国立研究所(INL)内でNRICが運営するマイクロ炉実験機の実証(Demonstration of Microreactor Experiments=DOME)用テストベッドでのLOKI MMRの試運転を目指している。