スロバキア 小型高速炉の導入を計画
29 Jan 2025
Ⓒ newcleo
英国で2021年に設立された先進炉開発企業のニュークレオ社は1月15日、スロバキアの主要な原子力企業であるJAVYS社とVUJE社各社と締結した枠組み協定の内容を明らかにした。同協定によると、閉鎖されたスロバキアのボフニチェ原子力発電所(V-1)1~2号機のサイトにおいて、ニュークレオ社が開発する第4世代の鉛冷却高速炉「LFR-AS-200」(20万kWe)を最大4基建設する計画。コストは32億ユーロ(約5,178億円)と試算されている。
スロバキア国営のバックエンド企業であるJAVYS社との協定では、使用済み燃料管理を実施する合弁会社「使用済み燃料利用開発センター(CVP)」設立に向けた条件を設定。JAVYS社が51%、ニュークレオ社が49%の株式を保有する。ボフニチェ原子力発電所(V-1)の1、2号機(VVER-440、各44万kWe)はそれぞれ2006年、2008年に閉鎖され、現在JAVYS社が所有、廃止措置を実施中である。ニュークレオ社は、JAVYS社が所有・操業する施設で貯蔵されている使用済み燃料を、フランス政府の協力を得て、再処理する。その後ニュークレオ社がフランスで計画しているMOX燃料製造施設で燃料加工の上、CVPが開発・建設するLFR(鉛冷却高速炉)で再利用する方針である。深地層処分を必要とする放射性廃棄物の量を減らし、スロバキアにおけるクローズド・燃料サイクルの確立に貢献したい考えだ。
スロバキアの大手原子力エンジニアリング企業であるVUJE社との協力では、VUJE社の数十年にわたる原子力発電所での経験、特に原子炉の建設と試運転、および高速炉技術開発分野での豊富な経験を活用。CVPが実施する初期の実現可能性調査とその後の活動への参画など、LFR開発に共同で取組むこととしている。
ニュークレオ社のS. ブオノCEOは「原子力分野での50年にわたる経験と既存の原子力インフラを持つスロバキアは、先進的モジュール炉(AMR)の新技術の開発、試験、実用化において、非常に重要で戦略的なパートナーである」「本プロジェクトは、他の欧州諸国でも実施可能であることを例示するもの。使用済み燃料の再利用は、欧州の今後数百年のエネルギー自立を保証し、競争力のある安定した価格で、EU産業の競争力を高めるために必要なステップである」と述べ、スロバキアの産業にとっての機会であるだけでなく、欧州原子力エネルギー部門全体のパラダイムシフトであると強調した。
欧州委員会が立ち上げた「欧州SMR産業アライアンス」は2024年10月、ニュークレオ社のLFRを、環境に優しく、安定し、コスト効率の良いエネルギー源の確保に役立つとして支援対象とする、9件のSMRプロジェクトの一つに選定している。
ニュークレオ社は2023年以来、スロバキアの原子力産業および政府の主要企業と積極的に接触。同年12月には、スロバキア経済省およびJAVYS社と、協力機会の模索とAMR開発を目的とする覚書を結んでいる。2024年7月には、スロバキアのVUJE社と、スロバキアにおけるAMRと先進的な燃料サイクルの開発の協力強化で合意していた。