原子力産業新聞

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韓国製SMR 欧州市場に参入へ

03 Feb 2025

桜井久子

ノルスク社(上)、KNXT社(下)とのMOU調印式 © KHNP

韓国水力・原子力(KHNP)は123日、ノルウェーとスウェーデンで小型モジュール炉(SMR)の導入を目指す各企業と協力体制を構築し、自社開発SMR「i-SMR州市場へ参入する方針を明らかにした。

KHNPは120日に、ノルウェー・オスロで新興エネルギー企業であるノルスク・シャーナクラフト(Norsk Kjernekraft)社と、121日には、スウェーデン・ストックホルムでプロジェクト開発企業のシャーンフル・ネキスト(KNXT)社とそれぞれ業務提携の了解覚書(MOU)を締結し、SMR分野で緊密に協力することで合意。ノルウェーやスウェーデンの自治体では、SMRの導入による地域経済の活性化やエネルギー自立に向けた取組みを検討しており、KHNPは両社と連携し、i-SMRの導入に向けた情報共有、建設候補地の予備的実行可能性調査(F/S)、スマートネットゼロシティ[1]i-SMRと太陽光や風力などの再生可能エネルギーを組み合
わせて、エネルギーの安定供給とCO2排出ネットゼロを実
現する都市構想。
の開発に取り組んでいくとしている。

ノルウェー国内では原子力発電導入に向けた調査に率先して取組む自治体の数が急激に増加。ノルスク社はSMRの建設、所有、運転を目指し、国内の複数のサイト候補地で各自治体や電力集約型産業と連携したSMRの導入検討や建設可能性の調査を実施している。ノルウェー政府は20246月に、原子力発電導入を検討する委員会を設立した。ノルウェーには発電炉の開発、運転、規制、許認可プロセスの経験はなく、同委員会は原子力発電所建設の将来的な可能性について多様な側面から幅広く検討・評価し、20264月までに政府に報告書を提出することになっている。

一方、スウェーデン政府の原子力発電所新設計画に沿って、KNXT社はスウェーデン南東部の予備的なサイト調査を完了し、SMR開発に注力している。スウェーデンは脱原子力政策を撤回し、大規模な原子力発電開発に向け、大きく舵を切っている。2022年の総選挙によって誕生した中道右派連合の現政権は、40年ぶりに原子力を全面的に推進しており、202311月には、原子力発電の大規模な拡大をめざすロードマップを発表した。同ロードマップには、2035年までに少なくとも大型炉2基分、さらに2045年までに大型炉10基分を新設することなどが盛り込まれている。

KHNPは、独自開発したSMRと、国内外におけるこれまでの建設・運転経験に基づき、欧州のSMR市場での地位を確立・強化する考え。KHNPJ. ファンCEOは「今回の合意はKHNPが欧州のSMR市場に参入する重要な機会になる」とし、「KHNPの技術ノウハウに基づき、世界のカーボンニュートラルの実現に貢献し、持続可能なエネルギーの未来をリードする」と語った。

i-SMRは、電気出力17kWの一体型PWRで、概念設計と基本設計は2023年末に完成。大型炉に比較して大幅に工期を短縮する、モジュール工法を採用している。KHNP2020年、i-SMR開発プロジェクトに着手。同プロジェクトは2023年に国家研究開発プロジェクトに位置付けられ、韓国政府のバックアップの下でプロジェクト全体を管理するi-SMR開発機構が発足。KHNPや韓国原子力研究院(KAERI)のほか、韓国電力技術(KEPCO E&C)、韓電原子力燃料(KNF)や斗山エナビリティなど、韓国の主要原子力関連企業が参加している。

脚注

脚注
1 i-SMRと太陽光や風力などの再生可能エネルギーを組み合
わせて、エネルギーの安定供給とCO2排出ネットゼロを実
現する都市構想。

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