欧州 同位体利用の月面ミッションに注目
04 Feb 2025
ベルギーのエンジニアリング会社であるトラクテベル(Tractebel)社は1月23日、同社が主導し、欧州原子力共同体(Euratom)が資金提供するPULSAR研究プロジェクトが、月宇宙探査向けのプルトニウム238(Pu-238)を用いた、放射性同位体発電システム(RPS)の概念設計を2024年末に完成したと発表した。
研究プロジェクトには、欧州委員会の共同研究センター (JRC)、ベルギー原子力研究センター(SCK CEN)、仏原子力・代替エネルギー庁(CEA)、蘭Incotec、仏・独ArianeGroup、Airbus Defense and Space、ブルゴーニュ大学Franche-Comteなどが参加し、コンソーシアムを形成。PULSARコンソーシアムは、太陽エネルギーが不十分な環境で宇宙船に電力を供給するために不可欠な、Pu-238を用いたRPS技術の確立を目指している。研究成果として、月面での用途に合わせたRPSの概念設計の他、欧州でのPu-238生産の実現可能性調査、宇宙用途を超えたダイナミックパワーシステムの可能性を探る市場分析を実現したという。
放射性同位体発電システム(RPS)は、Pu-238などの同位体の崩壊を通じてエネルギーを生成し、熱を使用可能な電力に変換する。トラクテベル社によると、この技術は、月面などの低照度環境での宇宙ミッションに不可欠だという。
PULSARコンソーシアムのRPSは、100~500 Weを必要とする月面ローバーや貨物車をサポートするように設計されている。フランス領の南米ギアナにあるギアナ宇宙センターからの打上げのための安全対策が組込まれており、中央に配置されたPu-238熱源を動力源とする2基のスターリングエンジンを搭載。モジュール式の設計により、モーターの故障に対する回復力を確保。期待される熱電変換効率は20%だという。
トラクテベル社では、構造健全性チェック、放射線量評価、熱分析、機械アセンブリ開発を含む包括的な工学研究を実施。研究チームは、月の状態をシミュレートするための3D機械的および熱的モデルを開発し、将来の設計反復とより高度な技術成熟度レベル(TRL)の土台を作った。この研究は、欧州宇宙機関(ESA)が開発を進める無人月着陸機アルゴノート(Argonaut)のミッションを支える重要な基盤になるという。