原子力産業新聞

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米TVA SMRプロジェクトのパートナーを選定

04 Feb 2025

桜井久子

クリンチリバー・サイトにおけるSMRの完成予想図  © TVA

米テネシー州のテネシー峡谷開発公社(TVA)は123日、テネシー州オークリッジ近郊にある同社のクリンチリバー・サイトにおける小型モジュール炉(SMR)の建設プロジェクトの初期計画と評価にあたり、米国のベクテル社とサージェント&ランディ社、およびGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社をパートナーに選定し、スケジュールとコスト見積りを共同で作成することを明らかにした。作業期間は12年以内と見込んでいる。

建設にあたっては、作業プロセスの統合を促進させる、統合プロジェクトデリバリー(IPD)モデルを採用する。TVAの技術協力パートナーである加オンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社も、IPDモデルを発電プロジェクトに採用し成功を収めており、オンタリオ州のダーリントン・サイトにおけるSMRBWRX-300」建設プロジェクトでも同モデルを活用しているという。TVAクリンチリバー・プロジェクトのB. ディーシー上級副社長は、「目標とする予算とスケジュール遵守のために企業間で協力し、リスクを共有、コストを削減していく」と語った。

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はクリンチリバー・サイトについて201912月、米原子力規制委員会(NRC)より、SMR建設用地として事前サイト許可(ESP)を取得済みTVAは合計電気出力が80kWを超えない2基以上のSMRを同サイトで建設することを想定し、20165月にNRCESPを申請していた。またTVAは、GEH社のBWRX-300BWR30kWe)がSMRの中でも最も実現性が高いと判断。20228月にGEH社とクリンチリバー・サイトでBWRX-300を建設するための計画策定と予備的許認可を支援する契約を締結。さらに、20233月、BWRX-300の建設を計画している加OPG社、ポーランドのシントス・グリーン・エナジー社とともに、GEH社が世界中で同炉の建設プロジェクトを円滑に進められるよう、BWRX-300の標準設計を開発することで合意、GEH社と3事業者間で技術協力契約を締結した。

なおTVA117日、ベクテル社、BWXテクノロジーズ社、デューク・エナジー社、電力研究所(EPRI)、GEH社、アメリカン・エレクトリック・パワー社(AEP)傘下のインディアナ・ミシガン・パワー社、サージェント&ランディ社などから構成されるパートナー連合を結成し、米エネルギー省(DOE)の第3世代+(プラス)小型モジュール炉プログラムから8億ドル(約1,242億円)の助成金を申請したことを発表している。ただしTVA理事会は、クリンチリバー・サイトでのSMR建設を承認する決議をまだ行っていない。理事会の承認とDOEの助成金交付により、BWRX-300建設の初期活動の加速化が期待されている。

またGEH社による同日17日の発表によると、デューク・エナジー社とBWRX-300の標準設計ならびに許認可を進める活動に投資する契約を締結した他、AEP社がインディアナ州スペンサー郡にあるインディアナ・ミシガン・パワー社のロックポート石炭火力発電所サイト内にBWRX-300を設置する可能性について表明したという。

DOEの助成金プログラムは2024年、米国内の原子力産業を強化し、米国初のSMR配備への支援、先進原子力技術のサプライチェーンの確立を目的に創設された。TVAJ. ライアッシュCEOは、「この助成金が交付されれば、クリンチリバー・サイトでのSMRの建設が2年前倒しされ、早ければ2033年に営業運転が開始される」「この資金調達により、国内のサプライチェーンの確立を支援し、コストとリスクを軽減するための教訓とベストプラクティスを共有することで、より広範なSMR展開への道が開かれる」と指摘した。

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