米国 DOE長官にライト氏
05 Feb 2025
米上院は2月3日、C. ライト氏の第17代エネルギー省(DOE)長官就任を承認した。賛成59票、反対38票、棄権3票だった。
ライト長官は、長官就任後に声明を発表。「トランプ大統領は、アメリカのエネルギー支配を回復するための大胆で野心的なアジェンダを示した。このビジョンの重要な要素は、米国がエネルギー開発とイノベーションにおいて世界をリードすること。DOEは、官僚的な形式主義を排除、常識的な解決策を優先し、米国人の創意工夫を育てることによって、これらの目標を達成していく」「米国民の増大するエネルギー需要を満たすため、米国の潤沢なエネルギー資源を開発し、グローバル・パートナーシップを強化し、新技術を進歩させることによって、エネルギーにおけるリーダーシップを強化する」「アメリカのエネルギーを解き放ち、人々の生活を向上させる」と抱負を語った。
長官就任前の1月15日、上院のエネルギー・天然資源委員会でC. ライト長官候補に対する公聴会が開催された際に同氏は、「私の人生の情熱は、人々の生活をより良くすることであり、人々を貧困から救い出すためのエネルギー源に私のキャリアのすべてを費やしてきた。トランプ(次期)大統領はエネルギーに対する私の情熱を共有しており、長官として、手頃な価格で、信頼性が高く、安全なあらゆる形態の米国のエネルギーを活用して、彼の大胆な政策を断固として実施するために尽力する」と宣言。「エネルギーの優位性を回復するために、国内外で米国のエネルギーを解き放つ」「技術革新で世界をリードし、国際競争に勝つため商業用原子力や液化天然ガスを含むエネルギー生産を拡大し、エネルギーコストを削減していく」「そのためには、官僚主義の排除、民間投資の促進、家庭や企業にとってエネルギーをより手頃な価格にするために必要なインフラの構築を優先し、その際に障壁となる許認可プロセスを見直していく」と強調していた。
なお同氏は、米国の長期的競争力の確保、エネルギー自立、および国家安全保障のために、原子力エネルギーと先進的原子力ソリューションの研究や新規原子力発電所の建設は不可欠と強調。データセンターや人工知能による電力需要が急増する中、原子力のような大規模なベースロード電源はエネルギー需要を満たし、重要な役割を果たすと指摘。その上で、DOEの先進原子炉実証プログラム(ARDP)の目標と、海外の敵対国の影響力増大に対抗する国内での濃縮ウラン生産の増強やHALEU燃料供給に係わる取組みを支持すると述べた。気候変動問題については、現実的かつ地球規模の課題であるとの認識を示し、異常気象に対処するための最善の道は、低コストで信頼性があり、安全な低炭素エネルギーを提供できるエネルギー技術を大幅に改良することであり、DOE傘下の国立研究所や民間セクターによる最先端の研究によって推進される絶え間ないイノベーションが必要と訴えた。
ライト長官は、自らを科学オタク、技術オタク、生涯エネルギー起業家と紹介。マサチューセッツ工科大学で核融合を学び、カリフォルニア大学バークレー校の大学院で太陽エネルギーとパワーエレクトロニクスを研究したという。2011年にリバティ・エナジー社を創設し、石油、天然ガス、次世代地熱発電に取組み、次世代原子力エネルギーおよび新バッテリー技術の分野でも業務提携の経験を有する。マイクロ炉「オーロラ」と核燃料リサイクル開発を進めるオクロ社の取締役も務めた。長官就任を機にこれら民間企業の職は辞すという。
なお上院は1月30日、D. バーガム氏の内務長官就任を承認した。同氏は、トランプ大統領にエネルギー政策の司令塔として新設された「国家エネルギー評議会(NEC)」の議長に昨年11月に指名されている。また、トランプ大統領は1月20日、D. ライト氏を米原子力規制委員会(NRC)の委員長に指名した。
トランプ大統領は、バイデン前政権が進めた気候変動重視から、化石燃料の積極開発へとエネルギー政策を大転換。大統領就任初日の1月20日に発令した多くの大統領令のうち、エネルギーや気候変動問題に関連するものでは、国内のエネルギー生産の増加と気候・環境規制の縮小の方針が示された。
「国際環境協定における米国第一主義」と題する大統領令では、気候変動に関する国際連合枠組条約に基づくパリ協定からの米国の再離脱を指示。米政権は1月27日に国連に通知しており、1年後に正式脱退となる。このほか、グリーン・ニューディールの終了と称し、気候危機への取組みに係る前政権の多くの大統領令や規制措置が撤回や改訂がなされ、2022年インフレ削減法のエネルギーインフラ規定の実施もその対象となっている。