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カザフスタン 原子力開発計画を拡大へ

10 Feb 2025

桜井久子

政府拡大会議で演説するトカーエフ大統領
© President of the Republic of Kazakhstan's Office

カザフスタンのK.-J. トカーエフ大統領は128日、政府閣僚や主要都市の自治体長、国立銀行総裁、国営企業の幹部らが出席する政府の拡大会議で演説。エネルギー不足に直面する中、ソ連からの独立後、初となる原子力発電所の建設を加速する考えを明らかにした。

同大統領は、2060年までのカーボンニュートラルの達成に向け、既存の天然資源を合理的に活用し、旧式の石炭発電所を新世代の石炭火力発電所へリプレースする一方で、カザフスタンの経済発展と生活の向上には原子力発電が必要であると強調。包括的な分析を行い、将来の原子力発電所建設のサイトと最新かつ安全な採用炉型を特定する必要があるとし、政府とエネルギー関係の政府系投資ファンド「サムルク・カズィナ国家福祉基金」に対し、原子力産業の発展に向けた長期計画の策定を指示したことを明らかにした。また、政府と議会による、将来的に新たな原子力発電所のサイトについての提案を期待していると発言した。

カザフスタンのエネルギー省は20238月、カザフスタンの原子力発電新設に関する進展状況を公表。同国初の原子力発電所となるサイトについては、アルマティ州のジャンブール地区にあるバルハシ湖西南に位置するウルケン村を選定。炉型については、建設と運転経験で実証済みの以下の炉型を候補に挙げている。

・中国核工業集団公司(CNNC)製「華龍一号(HPR-1000)」(100kWPWR
・韓国水力・原子力(KHNP)製「APR1400」(140kWPWR
・露ロスアトム製VVER-1200120kWPWR)またはVVER-1000100kWPWR
・フランス電力(EDF)製EPR-1200120kWPWR

カザフスタンでは昨年10月、原子力発電所建設を問う国民投票が実施され、原子力発電所建設に7割が賛成した。

化石燃料資源が豊富なカザフスタンでは、総発電電力量の7割を石炭火力で、2割を天然ガス火力で供給している。電力設備の多くが旧ソ連時代から稼働しており、資金不足などから近年は改修や近代化作業がほとんど行われていない。そのため、毎年増加する電力消費に対応できず、停電が頻繁に発生している。さらに、送電インフラの老朽化や送電ロスの影響で、特に南部で電力不足が深刻化している。電力不足の解消とカーボンニュートラルの達成に向けて、原子力発電の開発のほか、再生可能エネルギー、ガス発電の拡張を計画し、石炭火力発電のシェアの低減を目指している。なお、旧ソ連時代にはカスピ海沿岸のアクタウに建てられた熱電併給・海水脱塩用の高速炉「BN-350」(15kWe)が1973年から1999年まで営業運転していたが、現時点で国内で稼働する原子力発電所はない。

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