浮揚式原子力発電所の米国導入で英米企業が提携
12 Feb 2025
海洋分野の原子力利用プロジェクトを進める英国のコアパワー社は1月29日、米国の船舶設計および海洋工学コンサルタント会社であるグロステン社と、米国の港湾に導入する浮揚式原子力発電所(FNPP)の開発で提携したことを明らかにした。
コアパワー社が考案したFNPPのコンセプトは、港湾のインフラシステム。バージ船をベースとする原子力発電所、バージ船のサポートサービス、送電網との接続、運用チームなどを含んだ一括パッケージだ。燃料補給なしで長期間稼働し、運用現場への輸送が容易であり、モジュール工法のため、迅速な規模の拡大が可能であることを特徴とし、発電電力量は年間1.75億kWhを想定する。FNPPを港湾に係留し、停泊中の船舶、ターミナルクレーンや設備、港湾車両に対してゼロエミッションの電力供給を可能にするものだ。
コアパワー社は、FNPPの運用コンセプトの開発と浮揚式施設の設計をグロステン社に委託。このほか、グロステン社はバージ船の規制関係の対応、サイト位置承認の取得、FNPPの製造・組立て・輸送・設置のためのサプライチェーンの開拓も行う。
このFNPPプロジェクトは現状、コンセプト段階であり、米国南部にある未特定の港を対象として設計されている。コアパワー社とグロステン社は、原子炉搭載のバージ船のリスク評価を行い、安全性を最大限に高めるほか、実用性を考慮して全体的な調整をしているところだ。
グロステン社のM. ファンバーグCEOは、「コアパワー社のFNPPは、海事産業の脱炭素化という大きな潮流の中で、効果的かつ現実的な手段。当社の役割は、コアパワー社のビジョンを、港湾施設に信頼性の高い、ゼロエミッションの原子力発電を実現する実用性のある設計にするとともに、複雑な規制環境に対応し、規制当局の承認を得るための明確な道筋を示すこと」と語った。
海洋での原子力利用の歴史は古く、原子炉は1950年代から軍用および民間船舶に搭載され、初のFNPPである「スタージス(Sturgis)」は、1968年~1975年までパナマ運河に配備、1万kWの電力と浄水を供給している。
コアパワー社のM. ボーCEOは、「原子力発電は、温室効果ガスを排出せずに、安全かつ確実に、必要に応じて膨大なエネルギー源の利用が可能。陸上での原子力発電コストの80%以上は土木工事費であり、原子炉や電力システムに係わるコストは20%未満である。FNPPは造船所で製造され、組立てられるため、納期の迅速化と低コストを実現する」と指摘し、「FNPPは港湾における電力供給の問題を解決し、地域のエネルギー安全保障を確立する」と強調した。
コアパワー社は2024年11月、米ウェスチングハウス(WE)社とWE社のマイクロ炉「eVinci」を搭載した、FNPPの設計と開発に関する協力協定を締結。WE社のeVinciとヒートパイプ技術を用いて、FNPPの設計を進めるほか、FNPPの認可取得に向けた規制対応における協力を目的としている。