ベルギー 脱原子力政策を撤回へ
13 Feb 2025
ベルギーでは2月3日、北部オランダ語圏の独立を主張する中道右派「新フランダース同盟(N-VA)」主導の5党連立政権による新内閣が、昨年6月の下院総選挙から7か月以上を経て発足。新首相に選出された、B. ドゥ・ウェイバ氏(N-VA所属)は2月4日、連立政権の組閣後に初となる議会(下院)での政府声明を発表。エネルギー供給強化の重要性から、再生可能エネルギーと原子力からなる新しいエネルギーミックスを追求し、原子力の段階的廃止政策の撤廃を表明した。
合意された連立協定の中で、将来のエネルギーミックスにおいて重要な役割を果たすのは、カーボンニュートラルなエネルギー源としての原子力であると明記されている。具体的には、持続可能性、安全性、コスト最適化を条件に、電力ミックスにおける原子力の設備容量として400万kWを目指すとし、ベルギーで原子力産業を再興し、新規建設プログラムに着手するとしている。短期的には既存の原子力発電所を最大限活用し、長期的には新しい原子力発電の建設に投資するという。
政府は、2003年1月31日付の法律が定めた2025年までの脱原子力と新増設禁止に関するすべての条項を廃止し、短期的な施策として、ドール4号機(PWR、109万kW)とチアンジュ3号機(PWR、108.9万kW)について、少なくともさらに10年の運転期間延長を掲げ、原子力事業者らとの協議を開始する考えだ。政府は、安全基準を満たした既存炉の運転延長に必要なあらゆる措置を講じ、10年ごとに定期検査を実施。この検査で問題がなければ、さらに10年の延長を実施する。加えて、原子力の安全要件に妥協することなく、新しい原子炉の建設を促進していくとしている。
また、欧州原子力アライアンスの中でより積極的な役割を担うため、オブザーバーから正式メンバーになると表明。SMR導入については、欧州共通の型式認証の導入と許認可手続きの短縮を提唱し、原子力産業界と協力して、ベルギー初のSMRの開発、建設、試運転を支援するための具体的な計画を策定するとしている。
ベルギーでは現在、ドール発電所で3基、チアンジュ発電所で2基、2サイトで原子炉が稼働中。いずれもPWRを採用し、計5基の合計電気出力は411.8万kWである。設備利用率は90%前後と良好であり、原子力発電量のシェアは約40%(2023年実績)。なお、脱原子力に関する法律に基づき、ドール3号機は2022年に、チアンジュ2号機は2023年に閉鎖されている。
今回、運転期間延長の対象となる、ドール4号機とチアンジュ3号機については、両機とも1985年に運転を開始。40年目となる2025年に閉鎖が予定されていたが、エネルギーの安定供給に懸念が生じたため、政府は2022年3月にこれら2基の運転期間を10年延長し、2035年まで維持する方針を決定。事業者であるエンジー社とは2023年7月、運転期間の延長の最終合意に向けて交渉していくことで枠組み合意し、12月には、2035年11月まで運転期間を10年延長する計画の諸条件について最終合意に達した。これにより、両機は2025年に一旦運転を停止した後、最大20億ユーロを投じてバックフィット作業等を実施し、2025年11月の運転再開を目指すことにしていた。