原子力産業新聞

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スロベニア クルスコ増設のF/Sを米仏企業が受注

14 Feb 2025

桜井久子

JEK2完成予想図   © GEN energija

スロベニアの国営スロベニア電力(GENエネルギア)は130日の記者会見で、クルスコ増設計画(JEK2プロジェクト)と小型モジュール炉(SMR)の開発に関する活動の現状と今後の取組みを発表JEK2プロジェクトの技術的な実行可能性調査(TFS)の実施契約を米ウェスチングハウス(WE)社ならびにフランス電力(EDF)と締結したことを明らかにした。また、SMR発電所の設置については、1年以内に予備的なF/Sを実施するという。

TFSはJEK2の建設と運転の技術的実行可能性評価を目的としており、具体的には技術的要件、欧州とスロベニアの法規制要件のほか、安全性やエネルギー、実施の側面から評価する。TFS実施の入札に参加したのは、米WE社と仏EDF2社による見積総額は約830万ユーロ(13.3億円)で、TFSは今年の第3四半期に完了を予定している。WE社は、韓国の現代E&C(現代建設)社と協力してTFSを実施する。当初入札を予定していた韓国水力・原子力(KHNP)は、GENエネルギアに対し、このTFSへの入札に参加せず、JEK2プロジェクトの建設入札にも参加しないと通知。KHNPの決定は、現在の事業環境の評価と戦略的事業優先順位の変更に基づくものであるという。

JEK2プロジェクトは、現在のクルスコ原子力発電所に隣接する場所で計画されている。202310月、最大240kWeまたは2基の増設計画を掲げ、GENエネルギアは主契約者の候補として米WE社、仏EDF、韓KHNP3社を挙げていた。クルスコ原子力発電所では現在、WE社製PWR72.7kWe1基、1983年から運転している。WE社は運転と燃料供給のサポートを通じて、GENエネルギアと数十年にわたるパートナーシップを有する。

GENエネルギアは20245月、出力100kWe240kWe規模の増設プラントをスロベニアの電力システムへ接続した場合の安全性・安定性解析と経済性評価の結果を公表。電力網への影響の観点から、JEK2プロジェクトの最適な設備容量は最大130kWeであり、同プロジェクトの建設コストは、100万kWeのプラント増設で93億ユーロ(1.5兆円)、165万kWe増設で154億ユーロ(2.5兆円)と見積もっている。

GENエネルギアは、「質の高い透明性」を確保しながら、2028年までにJEK2プロジェクトの是非を問う国民投票を実施し、最終投資決定(FID)することを目指している。スロベニアでは当初、202411月に国民投票の実施を予定していたが、その合法性やプロジェクトの透明性を疑問視する環境団体や世論の批判を受け、国民投票の実施を中止している。同社は、EU各加盟国が策定する国家エネルギー・気候計画(NECP)に基づき、2040年までに大型炉、2050年までにSMR(設備容量約25kWe)の導入を想定。2025年中に、SMRプロジェクトの予備的なF/Sを実施し、候補となる炉型と設置場所を特定、技術プロバイダーとの協議を実施したい考えだ

スロベニアでは現在、クルスコ原子力発電所が同国の総発電電力量の約40%を供給している。同発電所はGENエネルギアと隣国クロアチアの国営電力会社のHrvatska elektroprivredaHEP)が共同所有。スロベニアの電力需要は、2050年までに倍増することが予想されているが、2033年以降は総発電電力量の約3分の1を供給する火力発電所を閉鎖する計画だ。2043年にはクルスコ発電所の運転期間(60年)も満了する。

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