仏電力、新型コロナの拡大で2020~2021年の財務目標をすべて撤回
16 Apr 2020
フランス電力(EDF)は新型コロナウイルス感染の拡大にともなう影響について4月14日に新たな経過報告を公表し、EDFグループが2020年の減価償却・控除前利益(EBITDA)の目標額を3月23日の報告で下端値の175億ユーロ(約2兆500億円)と設定していたことも含め、同年および2021年の財務目標をすべて撤回すると発表した。
感染の拡大が引き起こした経済的混乱により電力需要量が低下しており、原子力発電や原子力発電所の新規建設プロジェクト、その他のサービスも含めたEDFグループによる事業の多くが深刻な影響を受けていると説明。原子力による総発電量についても、予測値を下方修正する方向だとしている。
全開3月23日に公表された経過報告では、EDFグループは新型コロナウイルス感染の拡大という危機的状況の中、グループの重要活動を維持するために関係企業を全面的に動員、仏国内で予見され得るシナリオすべてで必要な電力を供給する経営能力や財務能力が備わっているとしていた。
すなわち、一貫した金融ニーズの予測方針により、同グループは2019年末時点の流動性資産として換金価値228億ユーロ228億ユーロ(約2兆6,800億円)を保有。これに加えて、いつでも融資を受けられる金額の上限(極度枠)として総額103億ユーロ(1兆2,000億円)が確保されている点を明らかにしていた。
この時点でEDFは、電力需要量の低下が同社の電力供給事業に及ぼす影響は限定的だとしており、零細な小規模企業に対する電気料金面の一時的な救済策についても、年末時点で大きな影響が及ぶことはないと予測していた。
しかしその一方で、外出禁止令が発令されたことにより発電設備のメンテナンス作業が中断し、EDFグループは定期検査日程の再調整を迫られることになった。これにともない、3月23日の段階で原子力発電による2020年の発電量は、当初予測していた3,750億~3,900億kWhから大幅に下方修正する見通しになっていた。2020年のEBITDA目標額である175億~180億ユーロ(約2兆500億円~2兆1,130億円)も、(この時点では)下端値を維持するとしたものの、設備の稼働率や関連コストの予測が明確になった時点で改訂される可能性があるとした。
同グループはまた、(3月23日の段階で)2021年の財務目標に及ぶ影響についても正確に評価できないと表明。定期検査日程の再調整は、2020年末から2021年にかけての冬季に設備の稼働率を最大とするのが目的だが、2021年の全体的な発電量には悪影響が及ぶかもしれないと予測していた。同様に、電力卸売市場における電力価格の低下も、年末時点の負債比率に大きく影響する可能性があると指摘していた。
仏国では2015年8月に成立した「緑の成長に向けたエネルギー移行法」により、原子力による発電シェアを2025年までに50%まで削減するほか、原子力発電設備も当時のレベルである6,320万kWに制限することが義務づけられた。現在、フラマンビル原子力発電所で163万kWの3号機(PWR)を建設中であることから、EDFは今年2月、国内で最も古いフェッセンハイム原子力発電所1号機(92万kWのPWR)を永久閉鎖とした。同型設計の2号機についても、6月30日に永久閉鎖することが決まっている。
(参照資料:EDFの発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月15日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)