世界経済 電力を基軸にシフトへ IEA報告書
21 Feb 2025
国際エネルギー機関(IEA)は2月14日、「Electricity 2025」の最新版を公表。原子力や再生可能エネルギーなどの低炭素エネルギー源により、今後3年間に世界で増加する電力需要分をすべてカバーできるとの見通しを示した。
同報告書によると、世界の電力消費量は近年で最も速いペースで増加し、2027年まで毎年4%近く増加することが見込まれている。この需要の伸びは、今後3年間で毎年、日本の年間電力消費量を上回る量が追加されることに相当し、主に工業生産や空調、運輸部門が牽引する電化の加速、およびデータセンターの急速な拡大によるものと分析している。また、追加需要の85%は新興国と開発途上国が占め、とりわけ中国では、2020年以降、電力需要が経済成長を上回る速いペースで増加、電力消費は2027年まで平均約6%の成長が見込まれている。
一方、先進諸国も2009年以降、電力需要は鈍化していたものの、再び経済成長とともに、電力需要も大幅に増加し始めると予想されている。米国では、今後3年間でカリフォルニア州の現在の電力消費量に匹敵する電力が追加される。欧州連合(EU)では、近年の景気減速から回復しつつあるとしながらも、電力需要の伸びはより緩やかに推移し、2027年までに2021年の水準に戻る程度と予測されている。いずれにせよ、世界全体では、再エネと原子力の発電電力量が電力需要の増加分をすべて賄うのに十分な速さで拡大していくと予想され、増分がカバーされる見込みだ。これら予測の結果、世界の発電によるCO2排出量は、2024年に約1%増加した後、今後数年間はほぼ横ばいに推移する見込み。
また、原子力発電について、報告書は「力強い復活を遂げつつある」とし、2025年以降の発電電力量は毎年過去最高を更新すると予測。向こう3年間で、年平均2.3%の成長を見込んでいる。この成長の要因として、保守作業が終了したフランスの原子力発電所の戦列復帰や日本の再稼働のほか、中国、インド、韓国等における新規原子炉の運転開始を挙げた。さらに、報告書は、原子力発電の成長傾向について、政策関係者がその重要性を再認識したことが大きな要因と指摘。それにより、より多くの国々が低排出エネルギーシステムの安定した基盤として、原子力を位置付ける動きが強まっていると分析した。